県連故郷巡りアマゾン=90周年に沸く「緑の天国」=(23)=旅行社の機転で救われた最終日

 昨晩の事故に加え、17日午前にはマナウス空港が濃霧に囲まれたために飛行機が離着陸できなくなり、34人が乗るはずだった便は結局キャンセルになった。
 このような予想外の事故や自然現象は、県連のせいでも、グローバル旅行社のせいでもない。
 グローバル旅行社が特別に手配してくれたおかげで、一行はいったん、ホテルに戻って休息することになった。次の出発時間は午後9時の便と決まり、各人はホテルを出発するまで自由に時間を過ごす。
 普通の個人旅行だったらその間、まる一日、ロビーでひたすら待つしかなかっただろう。

本橋幹久さん

 ホテルで昼食を取り始めると、本橋幹久さんが「自分の大学の後輩がマナウスで猿の研究を行っている。彼女も今日サンパウロに行く予定だったが、飛行機が飛ばなかったので会うことになった。あなたもどうか」と声をかけてもらった。折角の機会なので、連れて行ってもらった。
 『猿の研究』と言っても、大学も文系だった自分にはどのような研究なのか、どのような人が行っているのか見当もつかず好奇心がそそられた。待ち合わせ場所は、国立アマゾン研究所(以下、INPA)の科学の森(Bosque da Ciência)だ。
 ここでは、京都大学がINPAと共同で「フィールドミュージアムプロジェクト」を進めていた。本橋さんの後輩の女性は、ここでアマゾンに生息する猿の研究などを行っている。
 「元々野生動物が好きだった。スタジオ・ジブリの『もののけ姫』からも影響を受け、研究を通して人と野生動物の貢献ができたらって」。小柄で華奢なその女性は、科学の森の中を案内しながら、研究に携わり始めた理由を語った。
 「アマゾンマナティーはゴム景気の時に乱獲が激しく、ベルトコンベアの皮にされていたそうです」――マナティーを保護している場所を見学する本橋さんと記者に説明する。
 「特に『子連れの母親マナティーの肉が美味しい』という伝説があり、母親が殺されて子供が取り残された。残った子供のアマゾンマナティーを野生に復帰させるプロジェクトが進行しているんです」。

飼育員からミルクをもらうアマゾンマナティー

 さらに、「昨年ここにお立ち寄りになった眞子さまは、マナティーを見て『とても可愛らしいですね』と言ってミルクをあげていらっしゃった」と当時の様子を教えてくれた。
 本橋さんは、自分の好奇心が刺激されたのか、後輩の女性の説明に次々と質問を重ねていく。その質問に丁寧に答えてもらい、時間いっぱい付き合ってくれた。本橋さんは、「故郷巡りでこういう場所に立ち寄る時間もあったら良いね」と感心したように頷いていた。

 INPAからホテルに戻った一行は、午後9時の便で出発し、中継地のブラジリア空港のVIP CLUBで仮眠を取った。
 これも普通なら、ロビーで横になって待つしかなかったのを、グローバル旅行社が交渉してVIP待遇にしてもらったものだ。予想外の問題が発生したときこそ、その旅行社の本領が発揮されると痛感した。
 そんな中、援協前会長の菊地義治さん(79、岩手県)は、「ここに座ってお話でもしましょう」と言ってくれた。
 80周年に引き続き参加した菊地さんに感想を尋ねると、「どこも良かったよ」と微笑み、「一緒に来られなかった奥さんにはお土産を買えたしね。ただ、80周年には援協も式典に呼ばれたけど、今回それがなかったのが残念」と感想を述べた。
 朝午前7時45分頃にサンパウロへたどり着いた。ようやく到着し、全員がホッと安心したように微笑み、「着いたね」と顔を見合わせる。終わりよければ全てよし、一行は晴れたような顔つきで空港を後にした。(終わり、有馬亜季子記者)