■ヘンリー・ソベル氏死去■ブラジルの軍政と戦ったユダヤ人宣教師

ヘンリー・ソベル氏

 軍政時代に「反抗のユダヤ人宣教師」として知られたヘンリー・ソベル氏(75)が22日、癌で闘病中だった米国のマイアミで亡くなった。22日付ブラジル国内サイトが報じている。
 ソベル氏はポルトガル生まれのユダヤ人で、子供時代をニューヨークで育った。1970年にラビ(ユダヤ教の宗教的指導者)の資格をとると、同年から、パウリスタ・イスラエル人教会(CIP)に招かれ、宣教師として活動しはじめた。
 そんなソベル氏が一躍注目されたのは、1975年10月、サンパウロ市における対軍政の反抗の闘士、ジャーナリストのヴラジミール・エルゾーギ氏が亡くなったときだ。「陸軍秘密警察で自殺を遂げた」との軍の主張を疑ったソベル氏は、ユダヤ教の自殺者用の霊園に彼の遺体を納めることを拒否した。
 さらに、ソベル氏はカトリック教会のパウロ・エヴァリスト・アルン大司教ら、他の宗教の指導者と合同で、エルゾーギ氏の送別会を行った。ソベル氏はその後も、エルゾーギ氏の死に関する真相究明運動などにも貢献している。
 「ブラジルの多様性を好んだ」と言われたソベル氏は、40年以上にわたってブラジルに住んだが、癌の治療のため、米国に戻った。CIPでの活動は2007年に正式に退いたが、名誉教師としてかかわり続けた。
 2010年と2014年の2度、サンパウロ州政府からの顕彰も受けている。