福岡=世界中から「郷土愛」持ち寄る=第10回県人会世界大会=(下)=パラグアイ日系人女性の願い

 大会2日目(11月7日)、各県人会の代表者は会議に出席し、ほか190人の海外からの参加者は宗像大社辺津宮(へつぐう)の観光視察に向かった。宗像大社は4世紀から国家的な祭祀が行われていて、東洋からの交易品が多数出土している。その歴史的な価値を認められ、2017年に関連する遺跡群とともに世界遺産に登録された。
 視察団一行は午前10時に博多をバスで出発し、途中立ち寄った岡垣町で昼食交流会に参加。手作りの料理に加え、同町でつくられたミカンや日本酒などを堪能し、カラオケを楽しんだ。

マリルさん(左)と母親のソイラさん

 美空ひばりの「川の流れのように」を歌った執行(しじょう)マリルさん(57、三世)はペルーから母ソイラさん、兄ルヒオさんと共に参加した。マリルさんは日本語を話せないが、リマの日系人グループでカラオケ大会を催していて、「一生懸命練習したら、歌えるようになった」と笑顔で話す。
 次回の福岡県人会世界大会は2022年にペルーで開催されることが決まっている。兄のルヒオさんがペルー福岡県人会の代表を務めていて、マリルさんは「今から楽しみだわ」と話した。

パラグアイから参加した橋本さん

 パラグアイから参加した橋本リナさん(59、二世)はメキシコで開催された前回に続き、世界大会に参加するのは2回目。90年代に日本のゴルフ場や電気機器メーカーの工場で働いたことがあり日本語が堪能だ。
 家族は農業移民としてパラグアイに移住したものの、橋本さんが9歳の時に父親が亡くなって以来、母と5人の兄弟が家政婦やレストランの店員などをして懸命に働いて生計を立てた。そんな事情から、橋本さんは高等教育を受けたかったが、諦めざるを得なかった。
 世界大会の会期中、日本ではスノーボードの元日本代表選手が大麻所持の疑いで逮捕されたことが報じられていて、橋本さんはその事件に憤っていた。「日本は教育も医療も行き届いていて、治安がいい。これほど恵まれた国にいながら、そんな風に人生をダメにするのは馬鹿みたい」と言う。
 「南米に渡った人たちは皆、苦労している。日本にいるとその豊かさに気づかないかもしれないけれど、自分の人生を大切に生きてほしいわ」と話した。息子は3年前に県の交流事業で2週間来日している。自分が満足な教育が受けられなかった分、息子には惜しみなく支援するつもりだ。
 視察団一行は辺津宮への参拝のあと、道の駅でお土産を買い求め、帰路に就いた。3日目は参加者それぞれがゆかりのある県内の地区を訪問し、最終日の4日目にさよならパーティーに出席。最後まで温かいもてなしを受けながら閉会した。(終わり、山縣陸人通信員)