平和の巡礼者フランシスコ法王の日本訪問に思う

 フランシスコ法王が23日から日本を訪れ、被爆地の長崎と広島などを訪れた。ローマ教皇の日本訪問は38年ぶりで、カトリック信者か否かに関わらず、大勢の人が法王の言葉に耳を傾けた▼法王が訴えた事の一つは核兵器廃絶だ。平和と安定への望みは人の心にある最も深い望みの一つである事や、核兵器は安全保障への脅威から私達を守ってくれるものではない事なども強調。世界中に広がる「相互不信」の流れを断ち切る事の必要性も訴えた▼法王は長崎で「核兵器から解放された平和な世界は、あらゆる場所で数え切れないほどの人が熱望している事」と語り、「この理想を実現するには全ての人の参加が必要」と訴えた。また、広島では「平和の巡礼者として、被爆地を訪問しなければならないと感じていた」と発言。更に、訪日テーマの「全ての命を守るため」の如く、被爆者や遺族だけでなく、東日本大震災の被災者とも会い、イエズス会が創立母体の上智大学の学生達にも誠実に生きるよう訴えた▼母国アルゼンチンでは貧者や弱者救済にも心を砕いた人だけに、虐げられた人や苦しみの中にいる人への配慮の深さは特別だ。また、演説の中で引用した「主よ。わたしをあなたの平和の道具としてください。―中略―。闇に光を、悲しみのある所に喜びをもたらすものとしてください」という「聖フランシスコの平和の祈り」は、自らの法王名に「フランシスコ」を選んだ人である事をもう一度思い出させた▼アマゾン問題の司教会議では先住民への配慮を説き、弱者に寄り添う姿勢を見せた法王が、日本人や日本の為政者にどんな影響を与えたかを、核廃絶を含めて見守りたい。(み)