《ベネズエラ人難民》親を伴わずブラジル国境越える青少年=劣悪な環境もNGOが指摘=「責任はロライマ州に」とブラジル政府

予防接種を受けるベネズエラ人難民(参考画像・Jose Nildo/Semsa)

 米国ニューヨークに本部を持つ国際人権NGO(非政府組織)ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)が、ブラジル公選弁護人事務所(DPU)のデータを基に作成し、5日に発表したレポートによると、少なくとも529人のベネズエラ人の子供や青少年が、親や保護者を伴わない状態で国境を越え、ロマイラ州に滞在していることが分かった。6日付ブラジル紙が報じている。
 HRWによると、多くの子供は公選弁護人事務所のある公的な国境を通過していないため、公式に把握できていないケースも含めると実数はもっと多い可能性がある。529人の9割は13~17歳で、5~11月に国境を越えている。
 ロライマ州青少年人権審議会会長のタデウ・フランコ氏は、「状況は深刻だ。州内の保護施設には800人の青少年がいるが、保護者がいる青少年は何人で、保護者がいない青少年が何人か把握できていない」と語る。
 子供たちは、極度の貧困状態や迫害、虐待から逃れるため、徒歩やヒッチハイクなどで独力で逃げてきたという。また、仕事を求めてブラジルに来たと語る子供もいる。
 ブラジルHRWシニア調査員のセーザル・ムニョス氏は、「多くの子供たちが迫害や飢えに苦しみ、鉱物の採掘所などで働かされていた」と語る。
 HRWのレポートは、同州内の12~17歳の青少年保護施設は2カ所のみで、男子15人、女子13人しか収容できないことも問題視している。
 9月には地元の司法当局が、これらの青少年対象収容施設が過密状態にあること、安全、衛生状態が良くないことを理由に、これ以上の受け入れを禁止した。
 同州政府が諸団体に働きかけた結果、国境のパカライマ市と州都ボア・ビスタ市には年内に、ベネズエラ人の青少年収容施設が一つずつオープンする。だが、各施設の収容人数は10人ずつだ。
 州の受け入れ態勢が整わない中、多くのベネズエラ人青少年は、連邦政府主導のベネズエラ人支援計画「オペラソン・アコリーダ」に振り向けられている。同計画に参加する団体や自治体は、国内各地に住居や働き口を用意し、難民や移民を受け入れている。
 しかし、公選弁護人のリジア・ロッシャ氏は、「政府の支援計画は青少年の受け入れに適しているとはいえず、1990年に制定された、児童、青少年の人権規定に反している」としている。
 オペラソン・アコリーダを管轄しているブラジル連邦政府官房庁は、「件のレポートはロライマ州のベネズエラ青少年の置かれている苦境について、責任を問う相手を間違えている。オペラソン・アコリーダに応募し、恩恵や保護を受けているベネズエラ人の内、保護者がいない青少年は19人しかいない。そもそも、ベネズエラ人青少年の保護はロライマ州の管轄である」との書面を出した。