《ブラジル政府》エルサレムに商務事務所開設=大使館移転のための一歩と語る=アラブ諸国の反発止まぬ中

エドゥアルド・ボルソナロ下議(Lula Marques)

 ブラジル政府は15日、イスラエルのエルサレムに商務事務所を開設したと、16日付ブラジル各紙が報じている。
 イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相と共に開設式典に参加したブラジルのエドゥアルド・ボルソナロ下議は、「自分の父(ジャイール・ボルソナロ大統領)は、現在はテル・アビブに置かれているブラジル大使館をエルサレムに移す意向だ」と明言した。
 大使館移転は、福音派の歓心を買うためのボルソナロ大統領の選挙公約だ。しかし、イスラエルと対立しているアラブ諸国の強い反発を招いたため、3月にイスラエルを訪問した際には、「大使館移転のための最初の一歩として、エルサレムに商務事務所(正式名称はブラジル貿易投資振興事務局・APEX)を開く」と語っていた。
 同件に関しては、ブラジルの農牧畜業界からも、アラブ諸国の反発を招けばブラジル産食肉が輸出できなくなると、大使館移転に対する慎重論が出ていた。
 エルサレムへの大使館移転は、2018年3月に米国トランプ政権が先鞭を付けたものだ。イスラエル政府は他国もそれに続くことを期待していたが、現在までに同様の動きを見せたのはグァテマラだけだ。
 エドゥアルド下議は15日、「『エルサレムへのブラジル大使館移転は必ずやる。これは約束だ』と父は私に言った。我々はエルサレムに新たな一歩を示したい、ラテン・アメリカ諸国にも後に続いて欲しい」とした。同席のネタニヤフ首相も、「ボルソナロ大統領の約束をうれしく思う。エルサレムへの大使館移転は、ブラジルとイスラエルの両国の国益にかなうものだ」と語った。
 イスラエルの英字紙エルサレム・ポストによると、エドゥアルド下議は滞在先のホテルで、レバノンのシーア派イスラム主義政治組織、ヒズボラを、ブラジルはテロ組織認定すべきとの私見を示し、「共にテロリズムを打倒すべき。テロ攻撃を受けたくないならば、力を示す必要がある。国を引っ張っていくのは政府であって、テロ組織ではない。だからこそ、ヒズボラはテロ組織とブラジル政府は認定するべき」と語った。
 ヒズボラは米国、イスラエル、カナダ、英国、オーストラリア、ニュージーランドがテロ組織に認定しており、今年7月にはアルゼンチンとパラグアイもそれに続いた。ドイツは、「ヒズボラの軍事組織と、政党組織は別」との見解だ。
 ただし、ヒズボラはレバノン国内で学校や病院の支援を行っている組織という側面もある。ブラジルに住む約1千万人のレバノン移民とその子孫の存在と、ブラジル軍が同国内で平和維持活動を行っているという事実が、ヒズボラのテロ組織認定の障害となっている。