JICAボランティア=野球後進地域へ積極的な派遣=帰国報告会で15人発表

来年1月に帰国する2017年第3次隊

 来年1月(来月)に帰国する国際協力機構(JICA)の2017年第3次日系社会ボランティア15人の帰国報告会が、サンパウロ市内のJICAブラジル事務所で行われた。ブラジル全土での2年間の活動内容が発表され、それぞれの成果や悩みも語られた。
 アマゾナス州都マナウスのマナウスカントリークラブに野球隊員として派遣された宮田瑠星さん(25、福岡県)は、夢や目標を失う野球チームの子供たちに対し、日本への野球遠征資金を集めて実現した成果を語った。
 集めた資金は350万円。そのうち半分は、本紙でも今年4月に報道した、インターネット経由で広く呼びかけ、共感した人から資金を集める「クラウドファンディング」という手法によるもので、日本に住む日本人からの寄付だ。残り半分は、現地の日系企業が支援してくれたという。
 これにより、子供たちは今年8月末から約2週間訪日。宮田さんの地元、福岡県でプロ野球観戦、野球教室、大学野球観戦、学校体験、農家民泊や農業体験など充実した活動を行った。
 さらに、帰国後は子供たちが自分たちで企画し、アマゾンのゴミ拾いを行うなど成果を形に残した。宮田さんは、「帰国後も野球に関わる仕事を続けたい」と語る。
 バイア州都のサルバドール日伯文化協会に野球隊員として派遣された高江直哉さん(29、兵庫県)は、平日は貧困層の子供たちを中心に野球を教えていた。また、高江さんは日本語教師をしていた経験を活かし、活動とは別に生徒へ日本語も教えたという。
 野球人口を増やすために100%バイア産のグローブを販売するなどの工夫を行ったほか、選手が増えるなどの成果もあったが、「そもそも野球が盛んな地域ではなく、親も貧しく資金調達も難しい」という中で、次世代に繋げるための課題も感じた。
 今回、ブラジル全土に派遣された野球隊員3人は、全て新規の要請。JICAの永浦裕太企画調査員は「新規、特にマナウスとサルバドールのような野球後進地域へ優先的に派遣している」と説明する。
 アマゾニア病院で看護師として活動を行った石橋秋奈さんは、職場の抱える課題を解決する改善活動、5S活動(整理・整頓・清掃・清潔・躾)を推進した。だが、配属先の環境や5Sに対する考え方の違いから、日々の美化活動に変更して活動を行ったものの、「今後の活用を認めるほどのことはできなかった」と活動を振り返った。
 これには、門屋篤典次長から「案件自体が要請内容と合っていたかについてはどう思うか」と質問し、ボランティア要請の観点に必要な点などの意見を求めた。
 その他、今回が初の派遣となった柔道隊員や、高齢者介護、日本語教師の発表も行われ、各々の活動を総括した。

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 イボチ日伯文化体育協会で日本語教師として活動した國吉夏穂さんは、自身の活動の他に「ゲートボールをたくさんやって、今では審判ができるようになった」と語った。これに門屋篤典次長から「ゲートボール隊員の派遣要請は多いが、あり得ると思うか?」との質問が。最近は日系社会の高齢者だけでなく、若者にも広まってきているゲートボール。ボランティア派遣が実現したら更に普及が進むかも?