クルゼイロ・ド・スル大学=日本語通信教育が順調に=山田大使視察、学長と懇談=受講者早くも220人に増加

左から山田大使、アマラル学長、アラウージョ学部長

 今年2月に開講した、ブラジル・パンアメリカン日系人協会(APNB、矢野敬崇会長)とクルゼイロ・ド・スル大学が提携して行う「日本語・ポルトガル語教師養成コース」を視察するために、12日午前、山田彰大使と野口泰在サンパウロ総領事ら一行が、サンパウロ市タツアペ区にある通信教育学部を訪問して学長らと懇談し、教材を制作する撮影編集スタジオなどを見学した。

大学幹部と通信教育関係者と山田大使、野口総領事が記念撮影

 ルイス・エンリッケ・アマラル学長自ら大使一行を出迎え、「ご来学を大変誇りの思う」との歓迎の挨拶に続いて、通信学部のフェルナンド・アラウージョ学部長が概要を説明した。大学の全学生数が35万人で、うち通信教育学部だけで17万人もおり、「MEC(ブラジル教育省)の教育機関評価(最高が5)で4をもらっている」と語った。「日本語・ポルトガル語教師養成コースは学生が増えており、まだまだ伸びる可能性がある」と述べた。
 今年2月19日に通信講座を開講して以来、続々と入学申し込みがあり、ネットを通してコンピューターやタブレット、スマホでも自由な時間や場所で勉強できるシステムであることから、すでに220人が学んでいるという。
 ただし毎月1回、最寄りのポーロ(提携施設)で立ち合い授業を受け、主に質疑応答をする。このポーロが全伯に890カ所もあり、外国では静岡県浜松市にも1カ所。ただしポーロの全てに日本語教育用の教員がいるわけではない。
 月謝は280レアルと通常の立ち合い授業に比べて割安なのも魅力だ。いつでも入学でき、4年間かけて3200時間学び、日本語とポルトガル語の教師資格を得る。
 通信教育学部のシルビア・アルベルト語学コース責任者は、「日本語という分野は、我々にとって全く初めての経験。多くの知見や情報を交換しながら、本学の教材制作に関わる人員を総動員して、日本語コース教材を作りながら公開している最中だ。日本文化を解説する特別な教材もある。学生はサンパウロ、リオ、ブラジリアに特に多いが、全州に散らばっている」と説明した。
 山田大使は「日本政府も日本語教育に力を入れている。とっつきやすく、場所を選ばない通信教育はとても大事なもの。成功を期待している」とのべた。
 続いて一行は、別校舎の撮影編集スタジオに移動。撮影機材やスタジオ内部を視察し、名刺交換のやり方や文化的な意味を説明するビデオなど実際の教材動画を視聴した。

撮影編集スタジオで説明を聞く一行

 教材開発するサンパウロ総合大学(USP)のモラレス松原礼子教授は「専門家が作るデジタル教材だから、画面を押せば発声するなどの対話型の教材になっていて、学習者が飽きない。スマホでも勉強できるようになっていて画期的。2年目からは少人数がネットを介して参加する会話講座も始まる予定」と説明した。
 提案者であるブラジル・パンアメリカン日系人協会の矢野敬崇会長は「プロの仕事として、我々も感心している。これによって今まで以上に日本語や日本文化に関心を持つブラジル人の若者が増えてくれれば。せっかく日本語を勉強した卒業生が、それを活用できる留学先、就職先、日本のビザなどの条件を皆で整えていきたい」と語った。
 同講座の詳細や受講手続きはサイト(https://www.cruzeirodosulvirtual.com.br/graduacao_dados/letras-portugues-e-japones-licenciatura/)で確認できる。

パンアメリカン日系人協会、大学関係者、大使や総領事ら一行

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 クルゼイロ・ド・スル大学の「日本語・ポルトガル語教師養成コース」のスタジオで、実際の映像を見せてもらうと、1本が15分と短かった。その理由を制作担当者に聞くと、「移動時間やちょっとした空き時間に見られることを想定。それ以上長いと中断する恐れがあり、いっぺんに無理なく見られる長さ」と説明した。1年が前期、後期に別れており、各期ごとに6課をこなす。1課に対して6本のビデオとポ語教材40ページ分と、日本語を書く宿題30ページ分が出される。前期、後期ともに5課までは日本語教育そのもので、最後の6課だけ教授法となるとか。矢野敬崇会長が言う通り、せっかく勉強した日本語を使う“出口”がほしいところ。非日系も参加できる留学制度を増やすのに加え、日伯ワーキングホリデービザの早期整備も今後の課題となりそうだ。