県連日本祭り=大規模化で収益に繋がるのか?=今後のあり方巡り議論白熱=実行委員会と県人会に温度差

来年の日本祭りについて説明する谷口実行委員長

 ブラジル日本都道府県人会連合会(山田康夫会長)の「12月度代表者会議」が今月12日、サンパウロ市ビラ・マリアーナ区の三重県人会の会館で行われた。今年の日本祭りの最終会計が報告され、黒字となったことが発表された。一方、今後の日本祭りの方向性について、実行委員会と各県人会会長らの意識に温度差があることが浮き彫りになった。

 長崎県人会の川添博会長は「日本祭りでは、70~80代の婦人部が5日間ずっと仕事して大変。今年の来場者満足度は上がったというが、だからと言って県人会の収益が上がったわけではない。これで規模拡大したらどうなるか」と難しい表情を浮かべた。
 川添会長は「日本祭りをやるなら、利益を10%以上は出さなければ。実行委員会は規模拡大と言うが、それよりも売上が多くなって利益が出ないと県人会の会員もついてこない」と訴える。
 昨年は110周年式典を会場内で行った関係で来場者が特別に多かった。それを除いて考えると、今年は一昨年より来場者が多かったが、県人会の収益は少ない所が多かった。
 谷口ジョゼー眞一郎実行委員長によれば今年の日本祭りの最終会計は、収支ともに474万6684・09レアル。県連としても赤字ではないが、あれだけの巨大なイベントを実行しても利益は残らなかった。
 実行委員会側としては来場者数が維持でき、満足度は上がった。だが県人会側とすれば食のブースの売上が減少したところが多く、協力者にとって満足の行く結果ではなかった。その温度差が出ている。
 そんな中、来年の日本祭りは4千平米拡大し、最低来場者2万人増を見込んでいる。
 市川利雄前実行委員長は「利益は経費削減すれば何とかなる。それよりまずはお客さんが来ないと」と考える。谷口実行委員長も「今年は4回もブラジリアに行って政府から補助金を貰い、日本側とも毎週メールでやり取りしている。それも日本祭りに期待してくれているからだ」という。
 谷口実行委員長は、現在の同委員会は「手伝いも含めて5人ほどで運営している」と述べた。副実行委員長もおらず後継者不足なので「手伝いがあと2、3人ほしい」と呼びかけた。
 山田県連会長も「手伝ってくれるのは前会長でもいい。自分の県人会だけでなく、日本祭りにも危機感をもって」と訴えた。日系社会の一大行事として「市川前実行委員長、谷口実行委員長の後に続く人材が必要だ」と語った。
 これに対し、山口県人会の伊藤紀美子会長は「実行委員会はもっと各県人会の実情を見てほしい。自分のブース運営で精一杯な県人会も多い」と手伝いに人員を割く余裕がない現状を訴えた。
 谷口実行委員長は、「来年の日本祭りはこのまま進めるしかない」と述べ、「ブラジル政府、スポンサーからは拡大してほしいと期待されている」と厳しい表情を浮かべた。
 互いに一生懸命にだから温度差もできれば、ぶつかることもある。両者の意見が昇華されたら、来年の日本祭りはさらに素晴らしいものになりそうだ。

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 県連の代表者会議では、山口県人会の伊藤紀美子会長から「『日本』の祭りらしいエコの観点を持った付加価値をつけるのはどうか」という建設的な案が出た。例えば、皿を持っていくと2レアル安くなれば、環境に優しく来場者にも喜んでもらえると述べる。日本人らしいアイデアで特色を出す取り組みは有効かも。
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 県連代表者会議では、日本祭りの会場で和太鼓に合わせて神輿を担ぐ計画も報告された。谷口実行委員長は「他にも新たなショーなどの企画の案を出してほしい」と提案を求めた。他に新たな取り組みとして、毎月日本祭りの進捗を会報で報告すると発表された。この会報には「県人会の最新情報や各県の観光情報なども載せられる」とし、情報提供を依頼している。