2019年ブラジルサッカー10の教訓=地元紙が鋭い考察=攻撃的スタイル、外国人監督がキーワード

ジョルジ・ジェズス監督を中心に、全国選手権制覇を喜ぶフラメンゴの選手たち(Lucas Figueiredo/CBF)

 21日のクラブW杯決勝でフラメンゴがリバプールに敗れ準優勝に終わったことで、1月に始まり12月に至った2019年ブラジルサッカーシーズンが終了した。
 フラメンゴが席巻したと言っても過言ではない今期を振り返って、ブラジル紙が「2019年ブラジルサッカー界が得た10の教訓」を掲載した。
 

 教訓1 ターンオーバーは必要ない
 フラメンゴは、全国選手権、ブラジル杯、リベルタドーレス杯と三つの大会が重なる超過密日程を、あまり主力を休ませることなく戦い抜いた。
 週に2試合のペースが時に10週間も続くことがあるブラジルサッカー界では、特定の大会を優先し、別の大会の試合のメンバーで控えを出す(ターンオーバー)ことがある。
 ジョルジ・ジェズス監督は、余りに疲れていて怪我の危険性がある場合を除けば、選手を休ませる必要はなく、むしろ、ベストメンバーを多く使い、連携を深めることの方が大切との立場だ。
 教訓2 チームの財政状況を良くすることが肝要
 チームの累積負債の解消には時間がかかるし、その間に成績がついてこないと、ファンから突き上げられ、つい無理な補強に走ってしまいがちだが、忍耐が必要だ。フラメンゴは2009年に全国優勝選手権で優勝後、今年また王座に返り咲くために10年間待たねばならなかった。しかし、辛抱の末に得た優勝には最多勝ち点、最多得点のオマケまでついてきた。
 教訓3 攻撃的サッカーの復権
 ジョルジ・ジェズス監督は今年の6月はじめ、経験も豊富で、獲得に高額な資金もかかったが、連携が一向に深まらない選手たちを抱えるフラメンゴを救うためにやってきた。
 同監督は、そうしたチームにさらに、フィリペ・ルイス、ラフィーニャ、ジェルソンといった、欧州での経験を持つ選手たちを加え、強化を図った。理想のフォーメーションを見つけ、結果が出始めるのに時間はかからなかった。クラブW杯決勝でリバプールを相手にしてさえ、フラメンゴは引いて守る戦い方をしなかった。
 また、サントスも攻撃的スタイルで全国選手権2位に入った。
 教訓4 守備的サッカーの低調
 今年はコリンチャンス、パルメイラス、ブラジル代表など、守備的スタイルを好む監督に率いられたチームには厳しい結果が出た。元コリンチャンス監督のファビオ・カリーリ、元パルメイラス監督のフェリポン、マノ・メネゼスらはみな解雇され、浪人中で、ブラジル代表のチッチ監督も、今年はコパ・アメリカこそ優勝したものの、後半の親善試合が低調で、来年は3月早々から厳しい目に晒されることが予想される。
 教訓5 外国人監督の積極登用を!
 フラメンゴのジョルジ・ジェズス氏、サントスのホルへ・サンパオリ氏共に外国人だ。サンパオリ氏は契約延長交渉でもめてサントスを退団したが、サントスは後任に、ポルトガル人のジェズアウド・フェレイラ氏を据えた。
 教訓6 ボール保持率を高めることが勝利につながる
 近年の全国選手権や、昨年のロシアW杯などでは、「ボール保持率が高くても必ずしも勝利につながらない」との言説が支配的だった。典型的なのは2017年のコリンチャンスで、相手の方がボールの保持率が高くてチャンスも多く作っていたのに、守備的なスタイルを保ち、カウンターでの1点を守りきって勝利を重ねた。だが、今年の全国選手権では、基本的にボール保持率が高く、自ら積極的に試合の主導権を握るチームが好成績だった。
 教訓7 VAR
 今年はVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)システムが全国選手権で導入されたが、問題も多かった。最初は特に、ジャッジが出るまでの時間が長く、不満が多かった。シーズン中多くのクラブは選手に対して、VARに慣れるための講習を行った。ファンからも、一旦決まったかと思われたゴールが、数分間の中断後に正当なゴールだったと認められ、興ざめとの声も出た。ブラジルサッカー界がVARに適応していくプロセスは2020年も続く。
 教訓8 プレースタイルの確立
 2019年は、対戦相手に応じてプレースタイルを頻繁に変更するやり方が廃れた。フラメンゴのジョルジ・ジェズスだけでなく、アトレチコ・パラナエンセを率いてブラジル杯を制覇したチアゴ・ヌネス監督も、毎試合スタメンをころころ変えることは好まなかった。こうすることで連携も深まり、チーム力も向上する。
 教訓9 ウイングの復権 
 左右に大きく開いたウイングを配置するフォーメーションは、ブラジル代表で功を奏した。チッチ監督はエヴェルトンをウイングとして使い、コパ・アメリカを制覇した。その他に、欧州サッカーでも、アヤックスのD・ネレスや、ユベントスのダグラス・コスタなどがウイングとして活躍した。不調で途中解任されたコリンチャンスの元監督カリーリは、最後まで、サイド攻撃を任せられるスピードのある選手がいないとぼやき続けていた。パルメイラスのフェリポンも、今年はこうした選手に恵まれなかった。サンパウロFCで今年ブレイクしたアントニーも典型的なウイングタイプの選手だ。
 教訓10 ネイマール抜きのブラジル代表
 怪我やピッチ外のごたごたで、ネイマールがほとんど使えなかった今年、ブラジル代表はネイマール抜きのプレースタイル構築を求められた。彼に替わるタレントは出てきていないが、チームが団結して戦い、今年の主要目標であった、コパ・アメリカ優勝を成し遂げた。(26日付エスタード紙より)