《ブラジル》小頭症とジカ熱の研究進む=妊娠中の母親の栄養状態も影響

デング熱、ジカ熱、チクングニア熱のウイルスを媒介するネッタイシマカ(Rafael Neddermeyer / Fotos Públicas)

デング熱、ジカ熱、チクングニア熱のウイルスを媒介するネッタイシマカ(Rafael Neddermeyer / Fotos Públicas)

 ブラジルでジカ熱が流行し始めた2015年以降、ブラジルの研究者達が、妊婦がジカ熱に感染すると小頭症の子供が生まれる可能性が高い事に気づき、世界中がその後の研究に注目し始めた。

 ブラジルのリオ連邦大学の研究者と英国のオックスフォード大学の研究者は、10日に発表した論文の中で、ジカウイルスに感染した人達に生じる症状は、環境的な要因や生活習慣などの影響を受けると述べている。

 リオ連邦大学助教授のパトリシア・ガルセス氏は、2015年に小頭症児を産んだ母親の40%はたんぱく質の摂取に問題があったとして、妊婦の栄養状態が小頭症児誕生に影響を与えたとの認識を示した。

 ジカ熱に感染した妊婦から生まれた子供には、小頭症のように脳や脳内の神経細胞の発達に問題がある例や、網膜の問題(視覚障害)がある例、心室拡大などの心臓疾患がある例などが報告されている。

 ガルセス氏と同様の発言は、オックスフォード大学教授のゾウタン・モウナー氏も行っている。同氏によると、「たんぱく質を中心とする栄養素の不足がジカ熱の影響を深刻化させた」という。貧困家庭では炭水化物摂取量が多く、たんぱく質の摂取量が少ない事が、ジカ熱感染で生じた小頭症児誕生にも大きな影響を与えたというのだ。

 ジカウイルスは、デング熱なども媒介するネッタイシマカが媒介する。ブラジルはジカ熱で大きな影響を受けた国の一つで、約75%の患者は北東部で発生した。北東部はブラジル国内で最も人間開発指数が低い。

 ガルセス氏は、栄養状態が悪いと免疫能力が低下する事は科学者の間では常識とした後、たんぱく質の摂取量が少ないと体力が低下し、感染症などに対する免疫能力も低くなる事と、貧困者が多い北東部でのジカ熱流行と小頭症児誕生には密接な関係があると述べた。

 ブラジルと英国の研究者達の仮説は、動物実験でも確認された。妊娠中のネズミに栄養バランスが崩れた餌を与えると、栄養バランスが良い餌を与えたネズミより感染症に罹りやすく、症状も重くなるというのだ。

 ただし、栄養状態を整えるだけではジカ熱感染は防げない。ガルセス氏は、妊婦への栄養指導などと共に、ボウフラが発生するような場所をなくす事が、ジカ熱による影響を少しでも減らすために不可欠だと説いた。

 論文では、今回の研究で明らかになった事柄を医療現場に適用するのはまだ早いとしているが、その一方で、動物実験で明らかになった事実は、ジカ熱を含む感染症への対応のあり方を示唆するのに充分だとの見解も明らかにしている。(13日付G1サイトより)