《ブラジル》23州に民兵組織拡大=地方選への関与を当局は警戒=選挙裁「単独では対処できず」

ミリシアによる営業が発覚し、閉鎖処分となったリオの商店(参考画像・Tomaz Silva / Ag. Brasil)

 ブラジル、特にリオ州やリオ市では、現・元軍兵士や警官、消防士、民間警備会社出身者などが民兵(ミリシア)化して、特定地域を実力支配し、経済活動を牛耳るだけでなく、政治家と裏で結びついている事例がある。

 ミリシアが存在する州は連邦直轄区と23州にわたり、地域の治安を脅かしているため、今年10月に一斉に行われる統一地方選挙でも、ミリシア対策が争点の一つになる見込みと、27日付ブラジル紙が報じた。

 ミリシアは、殺し屋や用心棒として活動したりしている。リオ州以外のミリシアは、まだ組織として初期段階だが、1980年代から存在するリオのミリシアは根深い。

 リオ州以外のミリシアは住民や商店主から用心棒代を取り立てる程度のところが多いが、闇バス営業や、ガスボンベや大型水ボトル、生活必需品から武器や麻薬に至るまでの販売業、不動産業、海賊版ケーブルテレビやネットサービスなどにも入り込み、物理的支配、政治的支配につながっているケースもある。

 セアラー、マラニョン、ミナス、パライバ、リオ、リオ・グランデ・ド・ノルテ、セルジッペの7州では、ミリシアと政治家の癒着が確認された。連邦警察は、今年の選挙では18州でミリシア、もしくは既存の犯罪組織(ギャング)による選挙介入が起こる危険性があるとし、選挙にミリシアが関与することを警戒している。

 想定されている介入とは、ミリシアに協力する候補者や政党への資金協力や、ミリシア自身、またはミリシアに関わる人物の立候補だ。

 リオ州立大学の社会学者イナシオ・カノ氏は、「地域を支配するミリシアが他の武装組織のように、『誰それはここで選挙活動して良し、誰それはダメ』などと選別すれば、選挙の公正性は大きく損なわれる」と語る。

 マラニョン州で昨年行われたミリシア一斉摘発作戦では、ヴィアーナ市の市議選に出馬した候補者も1人逮捕された。

 ピアウイ州でも現・元警官がミリシア摘発で逮捕され、パラー州でも地域経済に入りこむミリシアの存在が確認された。両州のミリシアが今年の選挙に介入してくるかは不明だが、地元治安当局は警戒を強めている。

 ピアウイ州市警のグスタヴォ・ジュング警部は、「ここのミリシアはまだ小さいが、放置すれば勢力を拡大し、議席を持ったり、選挙に介入したりするようになることは自明」とした。

 リオ州選挙検察のシウヴァーナ・バチーニ局長は、「選挙裁判所にミリシアを抑える力が有るかと問われたら、ないと答えるしかない。ミリシア問題は選挙裁判所で扱える範囲を超えており、警察や通常の裁判所で扱うべき問題だ。複数の機関が連携して対処することが不可欠」と語る。