柔道=公的教育導入に覚書交わす=東京五輪パラ契機に関係深化=大臣「良き市民育成に重要」

交わした覚書を手に、ブラジルスポーツ庁長官、テーラ市民大臣、山田大使(Foto: Aldo Shiguti)

 在ブラジル日本国大使館とブラジル市民省及び同省スポーツ庁の共催による、日伯スポーツ交流促進のためのイベント「2020年東京―日伯スポーツ交流―」が10日午後に首都ブラジリアのスポーツ庁講堂で開催され、スポーツ協力に関する覚書及び柔道協力に関する覚書の署名式を実施した。当日、オズマール・テーラ市民大臣(当時)、デッシオ・ドス・サントス・ブラジルスポーツ庁長官、レイラ・バッホス上院議員のほか、連邦下院議員、ブラジル五輪パラリンピック委員会関係者など約200人が参加した。本紙姉妹紙ジョルナル・ニッパキの樋口アウド編集長が取材した。

ブラジル空手代表者らと記念写真(Foto: Aldo Shiguti)

 今回「柔道協力覚書」「スポーツ協力覚書」が署名され、2017年開始で本年終了するはずだった、柔道振興に関する日本からの協力が継続されることになった。合わせて市民省の方で、柔道のパイロット授業を受けるブラジルの学校を選び、日本で研修を受けた柔道講師を派遣し、研修結果を児童生徒に広める教育教程を導入することになった。つまり、将来的に公的教育カリキュラムの選択科目に柔道が取り入れられることになった。

山田大使(Foto: Aldo Shiguti)

 山田彰駐ブラジル大使は挨拶で「日伯両国は、選手やスポーツチームの人的交流とともに、幅広い分野で協力を進めていきたい」と述べ、柔道については「日本は、ブラジル柔道連盟の協力のもと、学校カリキュラムの中に柔道が組み込まれるよう、ブラジルの指導者を日本に招聘したり、日本の指導者をブラジルに派遣したりするなど、必要な協力を行ってきました。これを引き続き推進していきたいと思っております」とし、覚書調印によりさらに両国の絆が強力なるとの展望を語った。

テーラ市民大臣(Foto: Aldo Shiguti)

 オズマール・テーラ大臣も挨拶で、「日伯は経済関係に加え、人的関係も深い。本省の予算を管理しているのも日系人、本省で最も評価の高い事業部門を管理するのも日系人だ。我々は、古い伝統を誇る日本文化の誠実さ、勤勉さをもったメンバーを持っている」と人的絆を高く評価し、「ブラジル人の柔道への情熱は、日本人のサッカーへのそれと同じぐらい激しい。だから我々の五輪最多メダル獲得競技は柔道だ。この覚書は、畳の上でのメダルだけでなく、まさに良き市民育成のための協力強化と言う意味で重要だ」と語った。

藤井ブラジル男子柔道監督(Foto: Aldo Shiguti)

 署名式後のイベントで、藤井裕子ブラジル柔道男子監督は取材に答え、「メダルの数は意識していない。あくまで各選手が自己ベストを出すことに重点を置き、弱点を克服する練習を重ねている。それが結果につながるはず」との心構えを強調し、柔道指導活動の紹介をした。
 そのほか、ブラジルの五輪パラリンピック選手を迎え入れる日本のホストタウンからのメッセージの紹介、今回初競技種目となる空手のデモンストレーションなどが行われた。

ズラリと揃った関係省庁代表者と山田大使(Foto: Aldo Shiguti)

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 山田彰大使は「2020年東京―日伯スポーツ交流―」イベントの挨拶の最後に、「私自身は五輪パラリンピックで、可能であればすべての競技を観たい。だが特に関心がある競技はサッカー、バレー、柔道。実はこの3競技はリオ五輪でブラジルが金メダルを獲得している。これらの競技は日本対ブラジルの決勝戦の実現を期待しています。そのとき私は日本を応援しますが、皆さんはどうぞブラジルを応援してください」とユーモアたっぷりに語って会場の笑いを誘った。ちなみに、この時のテーラ市民大臣は13日、オニッキス・ロレンゾニ官房長官がその大臣職を継ぐことになり、連邦議員に戻った。キチンとこの覚書の件も引き継いでほしいもの。
     ◎
 柔道の公的教育導入に道を開く今回の覚書調印を、最も喜んだのは天国の故関根隆範さんでは…。ブラジル講道館柔道有段者会の現役会長として、サンパウロ州柔道連盟アレシャンドレ会長と共に30人の若手柔道家を引率して訪日し、まさに東京でこの動きの下準備をしている真っ最中、昨年10月29日(日本時間)に心不全により78歳で亡くなった。関根さんは「柔道を通して日本文化を正しく伝えていく」を信念として、絶えず日伯関係の最前線にいる民間人として献身していた。合掌。