米国へのブラジル人不法入国=逮捕者数は1年で10倍超に=入国審査の間は刑務所に=トランプの言いなりの外務省

トランプ大統領とボルソナロ大統領(Alan Santos/PR)

 米国に不法入国して逮捕されたブラジル人移民が1年で10倍以上に膨れ上がり、米国で入国審査を待つ間も米国の刑務所で非人道的な扱いを受けていると15日付エスタード紙が報じている。
 2018年度(前年の10月1日から当該年の9月30日まで)に米国に不法入国して逮捕されたブラジル人は1504人だったが、ボルソナロ氏がブラジル大統領に就任した2019年度は1万7893人に急増した。
 さらに、2020年度の最初の3カ月(2019年10月~12月)も4469人を記録。この数だけですでに18年度の総数の3倍近い。
 今のペースで行けば、1年間では19年度の総数を超えそうな勢いを見せている。それは2020年が米国の大統領選の年であり、再選を狙うトランプ氏にとって、不法移民の徹底追放は同氏が16年に当選したときの公約でもあるためだ。
 ブラジル人の不法入国者の大半は、テキサス州エル・パソから入国を試みて捕まった。公式発表では、国外追放の対象となっているブラジル人は2万8316人で、983人は追放が確定。移民・税関サービスで追放を待っている人も313人いる。
 米国は1月に、米国に不法入国したブラジル人を、エル・パソで米国と国境を接するメキシコのフアレス市に送ることを決めた。同市にあるカトリック教会の移民収容所「移民の家」には先週から、米国から送られてきたブラジル人53人が保護されている。
 これは、米国とメキシコとの間で合意が成立した不法移民対策「移民保護プロトコル」の対象にブラジル人も含むことになったためで、ブラジル側もすぐに承認した。
 このプロトコルに従うと、米国に難民申請したブラジル人は、申請審理が終わるまでメキシコで待機させられる。これは当初、グアテマラやエルサルバドル、ホンジュラスといった中米の移民だけが対象だったが、そこにブラジルが加えられた。
 同市にあるブラジル国領事館はブラジル人への支援要請は受けていない。ブラジル人たちは同国の法律に従って同市に滞在し、審理を待つ。
 フアレス市に送られたブラジル人たちは米国の刑務所の様子を訊かれ、「食事もろくにだされず、ひどい仕打ちを受けた」「刑務所の中が零下で寒い」など、酷い待遇を受けていたことをエスタード紙に語っている。53人の中には、家庭内暴力から逃げるために米国に行こうとした人や、財産を投げ打って車を買い、家族と共に米国へ来た人なども含まれている。
 だが、ブラジル人不法入国者の件に関して、ブラジル国外務省から米国へ解放嘆願が行われたことはない。外務省では、この件に関して話すこと自体がタブー視されているともいう。