「多様性を残すことは尊い」=秋の叙勲伝達式と祝賀会開催=元大臣や銀行経営者ら重鎮に

左側に並ぶ受勲者にお祝いの言葉をのべる石川レナト文協会長

 18日午後、在サンパウロ日本国総領事公邸で「2019年秋の叙勲伝達式」が行われ、同管轄の6人が受勲した。邦人叙勲は二宮正人氏(瑞宝中綬章)、外国人叙勲ではルーベンス・リクペロ氏(旭日大綬章、旧勲一等)、ロベルト・ロドリゲス氏(旭日重光章、旧勲二等)、ルイス・カルロス・トラブッコ・カッピ氏(旭日中綬章)、原田清氏(旭日中綬章)、矢野ペドロ氏(旭日双光章)だった。夜にはブラジル日本文化福祉協会の多目的ホールで「2019年日本政府秋の叙勲祝賀会」が開催され、約200人が盛大に祝った。

 夜の祝賀会は日系33団体が共催。代表して石川レナト文協会長が挨拶し、「移民史料館にはたくさんの勲章が子孫によって寄贈されている。その多くは開拓時代にテーラ・ロッシャ(赤土)と格闘した功績によるもの。受勲者の存在は、史料館の歴史において特別な貴さがある。ただのメダルにはない、国によって努力と貢献が認められた特別の輝きを放っている」と称賛した。楠木彰在聖首席領事は各人の業績を振り返り、「心から6人を祝したい」と述べた。
 続いて受勲者の挨拶。まず、カルモ公園への桜植樹を続けて日伯友好を象徴する一般市民の憩いの場にする傍ら、私費を投じて和太鼓導入に道を開いた矢野氏(86)が「天皇陛下に心から感謝を捧げたい。これは私だけが頂くものではない。千年紀を誇る日本文化の伝承には、多くの人の協力が不可欠」と前置きして、片岡久義氏、松原勝利氏、西谷博氏、吉岡省(しょう)氏らの名前を次々に挙げた。
 日伯比較法の権威にして大統領通訳として両国国交の重要局面を支えつつ、日系主要団体で役員として貢献を重ねてきた二宮氏(70)は「5歳で渡伯して大学教育を受け、日本政府のおかげで10年近く留学させてもらい、USPで36年間教鞭をとる傍ら、移民史料館やCIATEで28年間役員として尽くしてきた。それが報われた想い。心から感動している」と感謝した。
 法曹界の重鎮で、文協役員としても貢献を続けてきた原田氏(78)は「令和元年に叙勲を受けられるなど身に余る光栄。これも皆の協力のおかげ。コロニアの指導者の皆さんに感謝する」と述べた。
 日系社会の数々のイベント等で最大の協賛企業として貢献してきた現ブラデスコ銀行経営審議会会長、トラブッコ氏(68)は「この勲章への感謝は生涯忘れることはない。日系社会との繋がりは、私自身とわが社が生まれ育ったマリリア時代からのもの。日系社会担当者のリョウキチさんはいつも『ガンバッテクダサイ』と励ましていた」と絆を振り返り、「今年は東京五輪の年、お互いに最大限に能力を発揮できるよう、ガンバレ・ニッポン! ガンバレ・ブラジル」と言いながら突然取り出した日伯の小旗を振り、会場からの拍手をさらった。
 元農務大臣、文協ルラルで講演するなど日系社会と関係が深いロドリゲス氏は「私は農地で生まれ、父が近隣の日本人農家を称賛するのを聞きながら育った。60年前に農学を勉強している時に山中イジドロに出会い、以来、友情を温め続けている。日本から勲章をもらう喜びは言葉にならないくらい嬉しい」と述べた。
 元国連貿易開発会議(UNCTAD)事務局長、現ジャパン・ハウス名誉館長のリクペロ氏(82)は「今日は午後に総領事公邸で立派な式典をしてもらい、夜は日系社会から盛大な顕彰セレモニーをしてもらって心から感謝する。本国と移民コミュニティがこんなに連動し、文化を継承していることに、私はイタリア系子孫として嫉妬を感じる。文化を継承することでブラジルに多様性を残す。これは貴い行為だ。ぜひ続けてほしい」と感激した様子で述べた。
 続いて各夫人に花束が贈られ、記念写真を撮り、ゆっくりと晩餐をしながら歓談した。