ブラジルでも気をつけて!=コロナウイルスの世界拡散=サンパウロ市在住  成田修吾

咳をする女性

 今年1月、中国の湖北省と武漢市で発生した新型コロナウイルスの感染で2月24日現在、中国全土での2592人の死亡者があり、感染者も7万5千人をこえ、新たに409人の感染者が確認された。
 さらに増加を続けている新型コロナウイルス拡散は、日本以外の32カ国と地域でも感染者は合わせて1368人が確認されており、すでに27人の死亡者も出ています。
 こうしていま全世界を震撼させている史上最悪とも言われている新型コロナウイルスは、今後終焉宣言までどのくらいの期間がかかるのか、いまだに実態がつかめていないのが現状です。
 感染者が確認されている各国政府も外国からの旅客の出入国者の検疫をますます厳重な態勢をおしすすめ、日本国内でも死亡者が増え続け、感染者が高齢者から少年層まで広がりをみせ、感染の危機感を募らせてきています。
 日本の厚生労働省発表では24日現在、国内で感染が確認された人は、①日本で感染した人や中国からの旅行者などが145人、②クルーズ船の乗客乗員が691人、③チャーター機で帰国した人が14人の、合わせて850人です。亡くなった方も、一人や二人ではありません。(NHKニュース)
 26日のニュースでも感染者が最も多く確認されている北海道の函館でさらに高齢者の方が亡くなりました。

ブラジルにも迫る感染拡大の危機

 当地ブラジルでは、先月2機に分けて、軍用機で中国滞在中のブラジル国籍者を救援帰国させてアナポリス空軍基地で隔離感染の検査もしていました。(編集部注=その後、26日にブラジルでもラテンアメリカ諸国初となる感染者が確認された。イタリア旅行帰りのブラジル人男性だった)
 最近になってますます危機感が沸き上がり、ブラジル厚生省も対策に乗り出してきています。ちなみに、在伯日本大使館の官報では去る1月23日に【広域情報】として「新型コロナウイルスに関する注意喚起」を促し報じていましたが、引き続き31日には「新型コロナウイルス感染症に関する政府の取り組み及び日本査証の取り扱」について情報を報じていました。以後、新型コロナウイルスに関する政府情報が頻繁になってきています。
 今ブラジルの日系コロニアでは、日本語による社会情報を知る手段として、「ニッケイ新聞」による情報を入手する方法しかありませんが、インターネットを駆使すれば在伯日本大使館官報で概略は知ることもできます。
 しかし、これも高齢者にとってはごく少数の方々でしょう。そこで筆者は「ニッケイ新聞」を購読している方たちからもこの記事をコピーして、多くの方々が、NHKニュースなどを通じてお聞き及びのこととは思いますが、まだこうしたニュースをしらない日本語の読める高齢者の皆さんや、ご家族の方々に報せていただきたいと考えペンをとらせていただきました。

インフルエンザ同等に感染しやすいウイルス

 そもそもいま大騒ぎしている新型コロナウイルスとは、発熱や上気道症状(かぜ症候群)を引き起こすウイルスで、人に感染するものは6種類あることが分かっています。
 そのうちの2つは、中東呼吸器症候群(MERS)や重症急性呼吸器症候群(SARS)などの、重症化傾向のある疾患の原因ウイルスが含まれています。残り4種類のウイルスは、一般の風邪の原因の10~15%も占めます。
 今回の新型コロナウイルスはヒトからヒトへ感染した例が報告されています。感染のしやすさは、インフルエンザと同等であるなど、さまざまな研究が世界で報告されていますが、確かなことは現時点では分かっていないのです。
 SARS―CoVやMERS―CoVの感染者が見つかった場合、病気の伝播を抑えるために、感染症法(感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律)に従って感染拡大防止策がとられます。
 これらは共に、感染症法において二類感染症に分類されています。感染者には感染症指定医療機関への入院措置がとられ、陰圧管理された病室で治療を受けることになります。同時に疫学調査が行われ、感染経路や接触者が特定されるのです。

日本を含む感染国からの渡航者との接触に注意

 実験室内でのこれらのウイルスの所持についても、感染症法によって規制されています。SARS―CoVは二種病原体、MERS―CoVは三種病原体に分類されており、「所持の許可」「教育訓練」「滅菌の管理」において、SARSの方がMERSよりも厳しく管理されています。(日本国立感染研究所)
 世界保健機関(WHO)によれば、現時点の潜伏期間は1~12・5日(多くは5~6日)とされており、また、他のコロナウイルスの情報などから、感染者は14日間の健康状態の観察が推奨されています。
 今回の横浜港に停泊している3711人を乗せていたクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」も感染検査、隔離治療など厚生省は自衛隊衛生部隊の動員と合わせて、徐々に下船と帰宅を促していますが、それでも発症した例もあり、まだ完ぺきな防疫対策とは言えません。
 ブラジルでは、中国航空やエミレーツ航空などが中国と直結する航空路線があり、中国との行き来が多く、ご承知のように、サンパウロのリベルダーデ地区にも多くの中国人、日本人が買い物や、生活にと人口がふえてきておりますので、中国旅行から帰ってきた人たちがゼロだとは言えません。

本人の自覚症状なしに他人に感染することとも

 新型コロナウイルスは保菌者本人に自覚症状が出てくるまでの潜伏期間が長く、簡単に見分けがつかないところに感染防止の難しさがあると同時に、第一検査では感染が認められなかったのに、2週間ほどたってから異変に気が付いて、診断すると感染していたなどと、いまだに確定できないのが弱点なのかと思われます。
 自分に自覚がないとしても、自己防衛ではありませんが予防対策を細心の注意で毎日の消毒をすることが肝要でしょう。
 まずは、石けんやアルコール消毒液などによる手洗いを行ってください。できれば、消毒用アルコールで手洗いを丁寧にしてください。咳などの症状がある方は、咳やくしゃみを手でおさえると、その手で触ったドアノブなど周囲のものにウイルスが付着し、ドアノブなどを介して他者に病気をうつす可能性がありますので、咳エチケットを行ってください。特に屋内などで、お互いの距離が十分にとれない状況で一定時間いるときはご注意下さい。
 また、持病がある方などは、上記に加えて、公共交通機関や人混みの多い場所を避けるなど、より一層注意してください。なお、現時点では新型コロナウイルス感染症以外の病気の方が圧倒的に多い状況であり、インフルエンザ等の心配があるときには、通常と同様に、かかりつけ医等にご相談ください。
 新型コロナウイルス感染症が疑われる場合には発熱などの風邪の症状があるときは、学校や会社を休んでください。発熱などの風邪の症状が現れたら、毎日、体温を測定して記録してください。
 感染が疑われる場合、次のような症状がありますので、まずは身近の医師か、保健所へ出向いて検査を受けてください。
 風邪の症状や37・5度以上の発熱が4日以上続く場合、強いだるさ(倦怠感)や息苦しさ(呼吸困難)がある場合には、最寄りの保健所などにお問い合わせください。
 また、高齢者、糖尿病、心不全、呼吸器疾患(慢性閉塞性肺疾患など)の基礎疾患がある方や透析を受けている方、免疫抑制剤や抗がん剤などを用いている方で、これらの状態が2日程度続く場合は、医師に相談してください。
 なお、これらの症状が上記の期間に満たない場合には、現時点では新型コロナウイルス感染症以外の病気の方が圧倒的に多い状況であり、症状が似ているインフルエンザ等の心配があるときには、通常と同様に、かかりつけ医師等にご相談ください。

高齢者や持病持ちは要注意

高齢者、糖尿病、心不全、呼吸器疾患などの基礎疾患がある人は、風邪の症状や37・5度以上の発熱が2日程度続く場合は、医師に相談を

 現時点で、どのような方が重症化しやすいか十分に明らかではありません。通常の肺炎などと同様に、高齢者や基礎疾患(編集部注=さまざまな疾患の原因となっている病気。心筋梗塞や脳梗塞に対する動脈硬化症や糖尿病など)のある方のリスクが高くなる可能性は考えられます。
 新型コロナウイルスに罹った肺炎患者を調査した結果、1/3~1/2の方が糖尿病や高血圧などの基礎疾患を有していたとする報告もあります。(国立衛生感染病研究所発表)
 最新の感染の発生状況を踏まえると、例えば屋内などで、お互いの距離が十分にとれない状況で一定時間いることが、感染のリスクを高めるとされています。
 そのため、イベントなどの主催者は、感染拡大の防止という観点から、感染の広がり、会場の状況などを踏まえ、開催の必要性を改めて検討していただくようお願いします。日本の政府感染症対策室からも、これの自重を主催者側へ要望が出されています。
 また、開催する場合は、参加者への手洗いの推奨やアルコール消毒薬の設置、風邪のような症状のある方には参加しないよう依頼をすることなど、感染拡大の防止に向けた対策を徹底してください。
 風邪のような症状がある場合、学校や仕事を休み、外出を控え、手洗いや咳エチケットの徹底など、感染の拡大防止につながる行動にご注意してください。特に高齢の方や基礎疾患をお持ちの方には、人込みの多いところはできれば避けるなど、感染予防にご注意ください。
 そのためには、学校や企業など、社会全体の理解に加え、生徒や従業員の方々が休みやすい環境整備が大切です。テレワークや時差通勤も有効な手段です。
 今後も、この新型コロナウイルスの拡散については、毎日のニュースに出てくる内容を注視しながら、コロナウイルスの世界拡散の終焉を見るまでは遠くブラジルにいても油断できません。私たちも、まずは健康であると同時に外部との接触があった場合には、手の消毒に玄関口に用意した消毒用アルコールを慣例としておくとよいでしょう。
(2月26日記)