《ブラジル連邦下院》 非正規雇用者らに月額600レ=政府の提案額の3倍に=受給には複雑な条件あり

ウイルス感染を避けるため、ビデオ会議で進められた下院での審議(Pablo Valadares/Camara dos Deputados)

 【既報関連】 下院は26日、新型コロナウイルスのパンデミック(世界大流行)による急速な景気後退の影響を考慮し、非正規労働者に3カ月間、月額600レアルを支払う法案を承認した。ただし、シングルマザーのように、子供がおり、家計の中心である女性は月額1200レアルを受け取れる。18日に政府が行った提案では、非正規労働者への援助は月額200レアルの商品券配布だったが、議会はそれを3倍に増やした。26日付現地サイトが報じている。

 下院を通過した法案は今後、上院審議に入る。上院審議がいつになるかはまだ未定だ。この援助金を受け取れるのは、同一世帯から2人までだ。
 上院付機関の独立税制監査院(IFI)の試算では、この施策による国家財政への影響は、3カ月間で430億レアルだ。緊急援助の対象には「個人・零細企業家」も含まれる。ただし、この額には、2倍の額を受け取れる「家計を支える子持ち女性」の非正規労働者が考慮されておらず、国の財政負担はさらに増える可能性がある。
 援助金の受給条件は、「18歳以上」「正規雇用ではない」「社会保障や失業手当を受けていない」「ボウサファミリア(生活扶助)以外の、連邦政府からの所得援助を受けていない」「1人あたり世帯収入が法定最低賃金の半分(522・5レアル)未満か、世帯収入が法定最低賃金の3倍(3135レアル)未満」で、「18年の課税所得が2万8559・7レアル未満の人」だ。
 ただし、生活扶助受給者は、緊急援助か生活扶助の内の条件の良い方を受け取るのであり、二重受給はできない。持ち家政策の「ミーニャ・カーザ、ミーニャ・ヴィーダ」なども連邦政府からの所得援助政策となるので、恩恵を受けている人は対象外となる。
 また、「個人・零細企業(MEI)として活動中」か「全社会保障制度(RGPS)加入者」、「20年3年20日までに連邦政府の社会プログラム、CadUnicoに登録済みの非正規労働者」などの条件もある。
 新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、26日の下院本会議は、遠隔参加が認められ、本会議場には数人の議員しかいなかった。他の議員たちはビデオ会議で審議、採決に参加した。

医療関係法案も承認

 下院は同日、慈善病院(Hospital Filantropico)が統一医療システム(SUS)と契約した、患者受け入れの量的、質的目標を達成する義務を3月1日から数えて120日間停止することも承認した。
 慈善病院の指定を受けた医療機関には、複雑な手術など、SUSでは対応しきれない高度な医療サービスを無料で提供する義務があるが、新型コロナウイルスの感染拡大で、慈善病院にも感染症患者の受け入れが求められるため、SUSへの対応義務が一時的に免除される。ただし、SUSへの対応を条件に支払われていた資金は、これまで通り送金される。