《ブラジル》コロナ禍=回復者の血漿使った試験治療=サンパウロ州とリオ州で研究開始

コロナ感染症の新療法として期待がかかる回復した患者の血液(Fernando Frazao/Agencia Brasil)

 【既報関連】新型コロナウイルスによる感染が拡大する中、コロナ感染症(Covid-19)から回復した患者の血漿を用いた治療の具体的な研究を始める許可が出たと4~6日付現地紙、サイトが報じた。
 血漿(けっしょう)は血液に含まれる液体成分の一つで、タンパク質やビタミンなどを含む。今回始まるのは、コロナ感染症から回復した患者の血漿の中に含まれる抗体を、感染症患者の治療に用いる試験治療だ。
 研究者達が期待しているのは、回復した患者の体内に出来た抗体を使う事で、回復前の患者の重症化を防ぎ、回復を早める事だ。入院期間が短くなれば、現在は飽和状態となっている集中治療室の利用効率も高まる。
 国家研究倫理委員会が4日に研究開始を認めたのは、サンパウロ市のイスラエリタ・アルベルト・アインシュタイン病院とシリオ・リバネス病院、サンパウロ総合大学医学部付属クリニカス病院からなるコンソーシアムだ。
 コロナ感染症から回復した人は、30日以上経たないと通常の献血は出来ないが、血漿治療用の献血は30日以上を経ていなくても可能だ。献血は18~60歳以上で、体重55キロ以上、新型コロナ感染症のテストで陽性だった男性で、肝炎やエイズ、梅毒、シャーガス病を患った事のない人に限られる。女性は稀に、妊娠時に白血球に対する抗体ができる事があるため、除外される。
 血漿提供を望む感染症回復者は、シリオ・リバネス病院の血液銀行(電話11・3394・2560または3394・5261)に連絡をとると、医師からの電話がかかるので、病状や経過などの質問を受けた後に献血を行う事になる。治療用血漿は、その他の菌やウイルスに感染していないかを調べた後、重症患者に適用される。
 血漿治療はエボラ熱やH1N1への治療でも用いられており、リオ州の血液研究所でも同様の研究を始める。中国で行われたコロナ感染症の重症者5人(36~73歳)に対する治療では、3人が2週間以内に人工呼吸器が不要となったと3月30日付の国際的な研究誌で発表された。米国でも血漿治療の研究を始めたが、抗マラリア薬のクロロキン同様、有効性を実証するだけの数の研究例は集まっていない。
 クロロキンはボルソナロ大統領や米国のトランプ大統領が推奨している薬で、米国では緊急使用許可も出たが、安全性や有効性にはまだ疑問がある。ブラジルでは、ボルソナロ氏が招いた日系女医が400人に同薬を使い、半数が重症化を回避との情報が流れているが、同薬使用後に死亡した人もいる。
 米国でも60代の男性が使用後に体調急変で死亡との報道があり、コロナ対策班の中で賛否両論が出ているという。