《ブラジル》マンデッタ保健相=大統領からの解任危機逃れる=軍人閣僚や連邦議会が猛反対=隔離反対の候補に交代寸前=職務続行決定直後にも対立 

6日のマンデッタ保健相(Marcello Casal Jr./Agência Brasil)

 ボルソナロ大統領は6日、新型コロナウイルス対策で意見が対立するルイス・エンリケ・マンデッタ保健相を解任する直前まで行ったが、断念した。その裏には、軍人閣僚や連邦議会の強い反対があり、国民の76%から支持を得ている保健相の解任は阻止された。マンデッタ氏は同夜、職務の続行を宣言し、大統領の圧力に屈しない意思を表した。6日付現地サイトなどが報じている。  
 「ボルソナロ大統領が今日にもマンデッタ氏を解任」との報は、6日の16時過ぎに現地サイトに一斉に流れ、緊張感が走った。報道によると、後任には前市民相のオスマール・テラ氏らが考えられていたようだ。 
 テラ氏は4日にツイッター上で、「外出自粛令(クアレンテーナ)を実施している国では効果を表していない」とデータを示しながら発言。社会的批判を受けた上、投稿を削除されたばかりだ。そのため、国民の間では「社会的隔離政策を強制的に終わらせるのでは」との不安が高まり、ツイッター上では短時間で、同件に関する話題が数10万件上がった。 
 実際、ボルソナロ氏はこの日、テラ氏や大統領が推薦する医師たちとマンデッタ氏抜きの会合を行っており、夜にでも大臣交代が発表されるのではと報じられていた。だが、それは起こらなかった。 
 ヴェージャ誌の報道によると、解任を阻止したのは、ヴァウテル・ブラガ・ネット官房長官やルイス・エドゥアルド・ラモス大統領府秘書室長官といった軍人閣僚で、6日午後、ボルソナロ大統領と話し合いを行った末に断念させたという。陸軍はすでに、マンデッタ氏の提唱する社会的隔離(デスタンシアメント・ソシアル)に賛成の立場を表明していた。ダヴィ・アルコルンブレ上院議長もこの日、ラモス氏に、「連邦議会はマンデッタ氏解任に反対だ」との旨を伝えていた。 
  また、この日に外出自粛令の期間延長を宣言したサンパウロ州のジョアン・ドリア知事も、「マンデッタ氏はこの危機を乗り越えるのに不可欠な存在」とその重要性を説き、連邦検察庁が社会的隔離を守らないボルソナロ氏を法的に訴える準備を始めたと報じられるなど、あらゆる方面からマンデッタ氏への支持が示された。 
 マンデッタ氏はこの日の夕方、大統領と会談し、正式に職務の継続が決まった。 
  だが、この会合でも両者の関係にはすれ違いが見られた。同日夜の記者会見でマンデッタ氏が明かしたところによると、会合後、大統領側の医師2人からヒドロクロロキンをコロナウイルスの治療薬に推薦する大統領令に署名するように依頼された。だが、マンデッタ氏はそれを断ったという。