《ブラジル》下院が補償法を圧倒的多数で承認=コロナ流行下の州や市に朗報=議会での脆弱さ示す大統領=連邦政府は修正案狙いがやっと

ロドリゴ・マイア下院議長(Maryanna Oliveira/Câmara dos Deputados)

 13日、新型コロナウイルスの蔓延で全ての自治体がコロナ対策の経費増と、経済活動低下に伴う税収減に直面する中、州や市が国営銀行から借りた負債返済に猶予を与えたりする緊急法案「補償法149/19」を、下院が賛成多数で承認した。このことは、連邦議会がコロナ対策に関し、社会的隔離解除を訴えるボルソナロ大統領の連邦政府ではなく、隔離政策を奨励する自治体を支持する姿勢を改めて示すものとなった。14日付現地サイトが報じている。

 「補償法149/19」は、コロナウイルスの感染拡大によって、地方自治体の税収に大きな部分を占める、ICMS(商品流通サービス税)やISS(サービス税)といった税金の徴収額が大幅に減る期間を半年と想定し、それに代わる国からの補償を定めようとするものだ。
 同法案では、国が5~10月に、州や連邦直轄区、市に対し、ICMSやISSの減収分を支払うことを定めている。国からの補償金はコロナ対策に使うことが求められている。同件での国からの支出額は800億レアルと見られており、パウロ・ゲデス経済相が示した許容額の2倍に上る。
 同法案は、3月~12月の間、地方自治体が社会経済開発銀行(BNDES)や連邦貯蓄銀行(CAIXA)、ブラジル銀行といった国営銀行に負っている負債の返済免除も定めている。
 下院政府リーダーのヴィトル・ウゴ下議(社会自由党・PSL)は、パウロ・ゲデス経済相の「税金減収分の補填は、裕福な州に白紙手形を送るようなもの」という言葉を引用して、この法案への反対を試みた。これに対し、ロドリゴ・マイア下院議長(民主党・DEM)は「税収減は国も同じこと。それなら州や市の立場はわかるはず」として、国による補償を肯定した。
 下院での全体投票の結果、「補償法149/19」は431対70という、圧倒的な差で承認された。この法案は引き続き、上院での審議を必要とするが、上院でも承認された場合、州や市は計896億レアルの恩恵を受けることとなる。
 この法案が圧倒的な差で承認されたことは、ロドリゴ・マイア下院議長をはじめとする連邦議会内の勢力の大半が、社会的隔離政策を進めるジョアン・ドリア・サンパウロ州知事らをはじめとする知事たちを強力に支援していることを改めて示した。今や所属政党もなく、議会での支持勢力を失っているボルソナロ大統領には手痛い結果となった。
 この惨敗を受け、連邦政府は、修正案提出により、上院で法案の内容変更を行わせようとする策に転じているという。上院政府リーダーで、上院で報告官を務める予定のエドゥアルド・ゴメス上議、大統領長男のフラヴィオ・ボルソナロ上議、連邦政府の政局調整(アルチクラソン)担当者のルイス・エドゥアルド・ラモス大統領府秘書室長官らが調整にあたるとみられている。