《ブラジル》コロナ感染者5万2995人、死者3670人に=リオ市の医師が医療崩壊明かす=人工呼吸器で命の選択迫られる

自分にも、エレナ夫人にも陽性判定が出たリオ州のウィルソン・ヴィッツェル知事(Eliane Carvalho)

 【既報関連】ブラジル国内の新型コロナウイルス感染は止まらず、24日午後4時の保健省発表では感染者は5万2995人、死者は3670人となった。24時間で感染者は3503人、死者も357人増えた。
 感染者の急激な増加は各自治体の医療システムを圧迫し、医療崩壊を引き起こす。一例は人工呼吸器の不足で、助かるはずの命が助からないケースだ。医療崩壊が起きれば、致死率も上がる。
 リオ市西部のコロナ対応緊急病院で働く医師ペドロ・アーチャー氏によると、現場では人工呼吸器が足りず、誰に人工呼吸器をつけ、誰にはつけないかという選択を迫られていると、24日付現地ニュースサイトが報じた。
 「市の医療体制は崩壊した。リオ市にはもう、必要としている患者全員にわたるだけの人工呼吸器がない。救急車の人工呼吸器で凌ごうとしても壊れていたし、鼻からのカテーテルで呼吸を助け、肺の炎症を抑えようともしたけど、助からなかった。医師としてこんな状況に置かれるとは予想だにしなかった。コロナは進行がとても早い」と同氏は振り返った。

 人工呼吸器の不足については、「患者3人に2台しかない。他の医療機関にあたったり、出来ることはすべてやっているが、事態はもう、努力でなんとかできる範囲を超えている」と語った。
 医療用のマスクや防護服、手袋の不足は全世界で起きているが、リオ市も例外ではない。アーチャー氏は、「患者1人を診終えたら全て取り換えるのが理想だが、同じ衛生用品を使いまわしている。こんなことが一刻も早く終わるよう祈っているけど、改善には時間がかかるだろう。ブラジルではまだまだ、重症患者が増え続けている。今、社会的隔離を打ち切れば、待っているのはさらなる状況悪化のみだ」とした。
 リオ市役所はニュースサイト記者からの質問に対し、「人工呼吸器も、医療スタッフの衛生用品も、不足してはいない」と返答した。
 州別感染者数、死者数がサンパウロ州に次ぐ2番目のリオ州では、23日現在の感染者が6172人、死者が530人に達しており、コロナが死因だったかを検査中の死者も260人いる。リオ市の死者は過半数の322人だ。
 リオ市は医療器具などが不足し始めていることを否定しているが、同州のウィルソン・ヴィッツェル知事は今月9日、「リオ州では人工呼吸器が1400必要なのに、400しかない。コロナウイルス患者が大量発生すれば、助からない危険性が増す。だからこそ、皆に、外出を極力避けて欲しい、人ごみに足を踏み入れないで欲しいと強く訴えている。問題の深刻さがまだ十分に伝わっていないことが心配だ」と語っていた。
 同知事は、「人工呼吸器や部品は国内では作っておらず、輸入しなくてはならない。大部分は中国産だが、需要急増で入札も行われ、価格は高騰中」と、同じラジオインタビューで語っていた。