《ブラジル》エスカレートする大統領の奇行=ラマジェム巡り最高裁と対決=メディアや知事たちを罵倒=コロナ検査の結果は提出せず

4月30日のボルソナロ大統領(Marcos Correa/PR)

 4月29日に起きた、最高裁によるアレッシャンドレ・ラマジェム氏の連邦警察長官就任差し止めに対し、同氏の就任に固執するボルソナロ大統領が、4月30日にアレッシャンドレ・デ・モラエス判事に対決姿勢で強弁するなど、ボルソナロ大統領に独善的な物言いが続いている。4月28、30日付現地紙、サイトが報じている。

 4月29日に行われたアンドレ・メンドンサ新法相の就任式で、ボルソナロ大統領は、「まもなく、新しい連邦警察長官も発表できるはずだ」と語り、モラエス判事による差し止め命令を無視してラマジェム氏を強行就任させる可能性を示唆した。
 ラマジェム氏はボルソナロ家と家族ぐるみの付き合いがあり、同氏を連警長官に指名したのも、連警が行っている大統領次男カルロス氏に関する捜査など、大統領一家に関わる捜査の妨害や捜査の進捗状況に関する情報入手が目的との疑惑があがっており、そのための差し止めだ。連邦警察側も、セルジオ・モロ前法相人脈でもあるディスネイ・ロセッティ長官代行の継続を望んでいた。
 だが、ボルソナロ氏はモラエス氏の命令後、いったんは指名を取り消したものの、その後に態度を一変。連邦総弁護庁(AGU)の忠告を拒否し、モラエス判事の判断は「政治的決定」「判事一人の判断で、大統領による任命を差し止めるとは何事か」「憲法には大統領に任命権があると明記されている。憲法を尊重すべき」「決めるのは私だ」と主張し、最高裁に控訴を行うように、AGUに指示した。
 この件はじめ、4月29日から30日のボルソナロ大統領の言動はエスカレートしている。29日は大統領府内を前所属の社会自由党(PSL)の25人の下議たちと練り歩いており、取材陣との応対時も、下議たちが口出しをし、大統領を擁護するなどの行為が見られた。
 また、同日夜には自身のフェイスブックで、世界保健機関(WHO)が「幼児に自慰行為や同性愛を勧める」と批判したが、引用した内容がまるで異なる文脈であったことなどを指摘され、20分ほどで削除した。
 さらに、30日朝にはグローボ局を「リッショ(ゴミ)」「ポルカリア(ガラクタ)」と呼び、放送認可の延長を差し止めると威嚇的発言を行った上、証拠もないままに「コロナウルスの援助金の横流しを行っている州がある」などとも発言した。
 他方、司法界からの大統領への締め付けも厳しくなっている。大統領は4月30日、サンパウロ州連邦地裁に、48時間以内に提出を命じられていたコロナウイルス検査の結果を提出したが、診断書は添付せず、「陰性」とのみ報告した。
 また、最高裁のルイス・フクス判事からは、ボルソナロ氏が下議時代にスポートライト社から受けた光熱費の過払い疑惑に関する捜査依頼を連邦検察庁に出された。
 さらに、国連がボルソナロ政権を、「何百万人もの命を危険にさらしている」と厳しく批判する報告を出したことが4月29日に明らかになっている。