《ブラジル》コロナ市中感染、実はカーニバル前から?

レシフェ市など計5市で都市封鎖を行うと発表するペルナンブコ州の州政府関係者(Aluísio Moreira/SEI)

 【既報関連】オズワルド・クルス研究院(Fiocrus)が、ブラジル国内での新型コロナウイルス蔓延はカーニバル前から始まっていたとの見解を表明したと11、12日付現地紙、サイトが報じた。
 ブラジル初のコロナ感染者が確認されたのは2月26日で、イタリア帰りの男性がウイルスを持ち込んだとされてきた。
 だが、同研究院が新型コロナウイルスの遺伝子情報や死者の発生状況などを解析したところ、ブラジルでの蔓延は2月第1週には始まっていた事がわかったという。これが真実なら、感染源や感染経路が確定出来ない市中感染開始は、従来言われていた3月13日より40日近く早くなる。
 同研究院では、カーニバルの時期には10人が死亡、24人が感染しており、市中感染の発生確認時には、736人が感染、209人が死亡していたと見ている。
 今回の研究にも参加したウルグアイ共和国大学研究員のダイアナ・ミル氏によると、中国や米国での遺伝子情報研究により、死者数の推移と遺伝子の変化は相関関係にある事がわかったという。新型コロナの場合、感染してから死亡するまでの期間は約3週間だ。
 また、急性で重度の呼吸器疾患を起こした患者の粘膜から採取したサンプルを分析した結果、新型コロナが原因と見られる症例は1月19~25日の週から出ており、2月2~8日の週からは明らかに増えていた事が判明した。
 同研究院は一連のデータを総合的に判断し、ブラジルでのウイルス市中感染は、飛行機での旅行や外出を規制するよりずっと早く起き始めていたと結論付けた。カーニバルなどで人々が移動し、密集状態が発生した事も、感染拡大を早めたといえる。

 同様の研究は世界規模で行われており、米国の感染の中心地ニューヨークも2月初旬に市中感染が始まっていたと見られるなど、大半の国で、最初の感染者確認の2~4週間前からウイルスが蔓延し始めていたとの研究結果が出ている。
 目に見えない形、それも長期にわたる市中感染期間があった事は、コロナ対策を難しくさせる要因でもある。外出規制などは、ある程度早い時期に行わないと効果が薄いからだ。
 しかも、ブラジルは規制が中途半端にしか守られていないため、1人の感染者から直接感染する人の数が減らず、感染拡大に歯止めがかからない。早期かつ徹底的に規制すれば経済活動が止まる期間も短くて済み、その後の回復も早いが、対策が遅れた上に中途半端だと感染拡大が長引き、犠牲者増大と経済活動再開の遅れという悪循環を招くといわれている。