日本語教師=「教育現場の声をきいて!」=日本政府に意見書を提出=南米教師グループ401人

2017年7月に開催された第60回全ブラジル日本語教師研修会』の開講式の様子(参考写真)

2017年7月に開催された第60回全ブラジル日本語教師研修会』の開講式の様子(参考写真)

 南米10カ国と日本(南米での経験を持つ日本帰国者等)の日本語教師401人の集まり「声なき教師」が4月24日、「日本語教育推進法の基本方針(案)に関する南米の教師(連名)からの意見書」を日本政府に提出した。その中心になった一人、横溝みえさん(一世・愛知県)は「待遇改善や地位向上への取り組みや教材支援等を求める切実な声が多く寄せられた。これを機に『南米の日本語教育』の今後のために団結し、ビジョンを明確化していきたい」と熱意を込めて語った。

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 昨年日本で施行された「日本語教育の推進に関する法律」を具体化した基本方針が作成され、それに関する一般の意見を求めるパブリックコメントが募集された。
 南米の日本語教師の間では「基本方針」に関して、当地の教育の現状に即していないのではという疑問が浮上し、今回の意見書送付に至った。
 特に心配する意見があがったのが、南米と他地域の日本語教育の内容の違いだ。例えば北米の日本語教育は駐在員の子供や近年移住した日本人の子供などを中心に授業を行っており、英語と日本語を使いこなす高度バイリンガルな生徒が多い。
 一方、南米では移民子弟やブラジル人生徒が多いことからレベル、年齢、学習背景や目的が異なる学習者が同じ教室内で学ぶことも多い。デカセギ帰伯子弟には日本語・ポルトガル語の両語のレベルとも年齢相当に達しておらず、どちらの言語でも十分な感情表現ができない場合もある。
 その中で、バイリンガルの多い北米の意見が基本方針になってしまうと、南米の日本語教育と合わない危機感が持たれていた。
 同時に当地の教師の待遇改善による教育水準維持向上についても多くの意見が寄せられた。当地の日本語学校の中には低賃金やボランティアの教師も多く、大学生が土日を利用して授業を行うケースもあるという。日本語教師の待遇では生活を維持できないという理由から働き盛りの20~30代が少ない。
 このように諸処の事情から教育水準の維持向上が困難であり、その部分への支援を日本政府に要望している。
 今回の意見書は、横溝さんらが中心となりオンライン会議での勉強会を開き、個々の意見をSNSで募って意見書にまとめあげた。賛同者数は以下の通り。ブラジル205人、アルゼンチン36人、ウルグアイ3人、エクアドル2人、コロンビア13人、チリ10人、パラグアイ31人、ペルー48人、ベネズエラ27人、ボリビア12人、日本(南米での経験を持つ日本帰国者等)14人。
 横溝さんは本紙の取材に「日本語教育を南米で継続している日本語教師、一人ひとりの熱い思いと真摯な姿に心打たれました。そんな現場の声を聞いてほしかった」と語った。