《ブラジル》政権迷走中にコロナ死者1万6千人=感染者20万超えで世界4位

企業家や工業界の人物との会議でのボルソナロ大統領(14日、Marcos Corrêa/PR)

 【既報関連】新型コロナウイルスの感染拡大が止まらず、17日の保健省発表の感染者数は20万2918人、死者も1万6118人に達した。
 16~18日付の現地紙やサイトが一斉に報じているのは、ネウソン・タイシ保健相の辞任と、感染者数が米、露、英の3カ国に次ぐ、世界4位となったという事だ。
 タイシ氏の保健相辞任は、クロロキンをコロナ感染症治療薬として使用する事に関し、大統領と見解が一致しなかった事が直接的な原因だ。
 クロロキンとその派生品のヒドロキシクロロキンの有効性と安全性はまだ十分に証明されておらず、タイシ氏や前任者のエンリケ・マンデッタ氏は、社会的隔離政策緩和と軽症者へのクロロキン使用の2点で大統領と見解を異にしていた。
 タイシ氏がクロロキンの使用に関して警告を発した時、ボルソナロ氏は自分の意向に沿うよう注文を付け、圧力をかけた。その直後の辞任は、同薬承認が医師としての良心に反する上、コロナ対策関連の大統領令発令時につんぼ桟敷に置かれた事もあり、この大統領とは働けないとの判断から来たようだ。
 現状では軽症者へのクロロキン使用承認に応じる医師はいないだろうとの忠告もあり、ボルソナロ氏は保健省No.2のエドゥアルド・パズエロ陸軍大将を保健相代行に指名。後任を決める前にクロロキン使用基準に変更を加える意向だといわれている。

 1カ月弱で2人目の保健相退任という事実と、マンデッタ氏解任前から続く反隔離への動きは、現政権の迷走ぶりを如実に示し、感染者や死者の増大という結果も招いた。
 タイシ氏が就任した4月17日は、ブラジル初のコロナ死者が保健省統計に加えられてから1カ月目で、同日の死者は2141人だった。丸2カ月となった5月17日の死者は1万6千人を超えた(世界6位)。
 また、ボルソナロ氏が反隔離を強調し始め、マンデッタ氏との関係が悪化した事や、緊急援助金の払い出しで人々が長蛇の列を作り始めた事を反映し、4月下旬以降、感染拡大が加速化。2~3日で感染者が倍増する感染爆発まではいかないものの、外出規制による感染拡大抑制効果が薄れた事で、都市封鎖を採用する自治体も現れた。
 ボルソナロ氏は14日も、経済活動再開のために外出規制を解くべきとし、スウェーデンの例を挙げた。だが、スウェーデンは、密集、密接を避けるよう国民に訴えた上で通常通りの活動を継続したが、14日現在の人口100万人あたりの感染者は2830人、死者は349人で、外出規制を敷いた他の北欧諸国より死者の割合が高い。
 また、同国の総人口は1千万人で、一人暮らしの人が56・6%、1平方キロあたりの住民数も25人で、総人口が21倍で、小さな家に大勢が住むファヴェーラも多いブラジルとは条件がまるで違う。ブラジルの14日現在の感染者は、100万人あたり966人、死者も67人だから、スウェーデンを見て外出規制の緩和や解除を説くのは不適切で、医療崩壊を早めるとの報道もある。