《ブラジル》連警がフェイクニュース捜査=大統領支持者ら対象に=教育相ら大反発

民主主義への脅威とみなされたジェフェルソン氏のツイッター投稿(twitter)

 最高裁に対する威嚇行為を働いたほか、フェイクニュース拡散の噂のたえなかった政治家や企業家、ブロガーを対象とした一斉捜査を、連邦警察は27日に行った。主な標的となったのは、ブラジル労働党(PTB)党首で元連邦下院議員のロベルト・ジェフェルソン氏や、大手スーパー「アヴァン」社長のルシアノ・ハン氏など。かねてからボルソナロ大統領の有力支持派として有名な人物も続々と捜査対象となった。27日付現地サイトが報じている。
 今回の捜査命令は最高裁のアレシャンドレ・デ・モラエス判事が下したもの。連邦直轄区、サンパウロ州、リオ州、マット・グロッソ州、パラナ州、サンタカタリーナ州で計29の家宅捜索令状が出た。
 捜査対象となった主な人物は、ジェフェルソン氏やハン氏、サンパウロ州議員のドウグラス・ガルシア氏(社会自由党・PSL)とその側近たちだ。PSLは、大統領が当選した時の所属政党。
 この他、カルラ・ザンベッリ、ビア・キシス、ダニエル・ルシオ・ダ・シルヴェイラ、フィリペ・バロス、ジュニオ・ド・アマラル、ルイス・フェリペ・オルレアンス・エ・ブラガンサというPSLの連邦下議6人と、同じくPSLサンパウロ州議のジウ・ジニス氏も捜査対象となった。
 また、フェイクニュース・サイトの大手「テルサ・リーヴリ」主宰で、大統領三男エドゥアルド下議との蜜月ぶりも伝えられているブロガーのアラン・ドス・サントス氏や、ネオナチ集団「300・ド・ブラジル」主宰のサラ・ウィンター氏も対象となった。この他、フィットネス・ジム「スマート・フィット」社長のエジガール・コロナ氏や投資家のオタヴィオ・オスカール・ファコウリ氏も対象となっている。
 捜査対象になった人物は、コンピューターや携帯電話などを押収されている。同捜査は、最高裁や連邦議会へのSNS上の攻撃にあたる投稿の発信元を探る他、フェイクニュース拡散費用の出処などを突き止めることが目的だ。
 ジェフェルソン氏は今回の捜査を「ナチスのようだ」と批判し、言論の自由の不当な統制だと主張した。メンサロン事件の告発者で、自らも収賄罪で実刑判決を受けた同氏は、ボルソナロ大統領が中道勢力「セントロン」に接近するための窓口役として再度注目を受けている。同氏はツイッターに、マシンガンを抱えた写真や、「法衣より銃の方が強い」「大統領は最高裁判事を解任せよ」などの過激なメッセージを載せ、問題になっていた。

 問題発言を連発しているアブラアン・ウェイントラウビ教育相は27日も、大戦直前のナチスドイツで起きたユダヤ人排斥事件になぞらえて、「大統領支持者が狙われた今日は、国家的恥辱の日。ブラジル版の水晶の夜だ」と言い放った。
 モラエス判事は捜査対象となった下議と州議8人に対する事情聴取を10日以内に行うことや、今回の捜査に関連する投稿の消去などを禁じる事も命じた。さらに、「表現の自由を無責任な抗議活動と混同してはならない」「表現の自由はボット(偽情報を拡散する自動プログラム)で作られるべきではない」と主張している。
 モラエス判事は、大統領の意に反してコロナウイルス対策を州や市に一任する司法判断を出しており、大統領支持者が彼の自宅を包囲して威嚇し、逮捕者が出る騒ぎも起きていた。