《ブラジル》コロナ死者フランス抜き世界4位に=成長見込み再引き下げ

105歳で退院する女性。回復者は増えているが、まだ、40%に止まっている(Prefeitura de Manaus)

 【既報関連】新型コロナウイルスの感染拡大で経済活動が落ち込み、景気後退(リセッション)は避けられないとの認識は世界共通だが、感染終息前に経済活動を再開する事への懸念も大きい。
 5月30日夜の保健省発表によると、ブラジルのコロナ感染者は前日比1万6409人増え、51万4849人、死者も480人増の2万9314人となった。一見すると1日あたりの感染者や死者の増加数は減ったかに見えるが、前日は感染者が3万3274人、死者も956人増えており、週単位での増加数は相変わらず右肩上がりだ。
 死者数は5月30日の時点でフランスを抜き、世界4位になった。1日朝現在、ブラジルの死者は2万9341人。それより多いのは、10万5797人の米国、3万8489人の英国、3万3415人のイタリアのみだ。
 コロナ蔓延で世界経済が落ち込んだ事で、今年は世界規模の景気後退は不可避だ。ブラジル中銀も1日に、今年の国内総生産(GDP)は6・25%下落との市場関係者による景気予測の数字を発表した。前週の5・89%下落が下方修正されており、コロナ前の状態に戻るのは2025年以降との予想も出ている。
 だが、経済活動の落ち込みが、ボルソナロ大統領が主張する社会的隔離政策だけが原因ではない事は、同氏が反隔離の例に引くスウェーデンの中銀が5月第2週に、今年のGDPは7~10%下落と予測している事でも明白だ。この数字は、社会隔離を導入した欧州連合諸国の予測(7・5%減)と大差ない。
 イタリアやスペインが厳格な隔離導入から2カ月で死者数が減り始めたのに、医療体制や人口密度などの条件に恵まれ、感染拡大抑制が容易だったはずの同国の死者は現在も増加の一途にある。5月27日付BBCニュースは、スウェーデンのコロナ対策責任者のアンデルス・テグネル氏が、「我が国の方策はブラジルの実情には合わない」と言ったとも伝えた。

 5月29日付エスタード紙が報じた全国商業連盟のデータによると、社会隔離緩和で営業を再開したサンタカタリーナ州他のショッピングセンターでは、売り上げが閉鎖前の30%にしか満たない店もある。市街地の店の売り上げも30~40%落ち込んでいる。これは、感染を怖れる人達が人ごみや外出を避けている事を物語る。
 ブラジルでは、社会隔離の徹底が図れず、4月後半から目に見えて感染拡大が加速。コロナによる死者が1日1千人の大台を初めて超えたのは5月19日で、この時点で、コロナの死者は18年の最多死因だった心筋梗塞や脳梗塞などの循環器系疾患の980人/日を超えた。また、世界中の感染者は1日朝の時点で615万2千人超、死者も37万1700人で、深刻さは増すばかりだ。
 ブラジルでは州や市が社会隔離を積極的に導入したため、エクアドルのように自宅での死者続出や、路上で火葬という事態は避け得ている。サンパウロ市では入院患者が66%減ったが、サンパウロ州内陸部のカンピーナス市の病床占有率は上昇中。どこの自治体も、気を許せば感染拡大の波が再加速しかねない状況だ。