《ブラジル》衛生環境不備で4万人が入院=必要経費は1610万レアル

洪水、冠水も衛生環境が不適切な一例だ(Natinho Rodrigues)

 ブラジル環境・サニタリー技術協会(ABES)が5日、衛生環境の不備が原因で病気になって入院した人が第1四半期だけで4万人いたと発表した。
 衛生環境が不十分または不適切なために起こる病気(DRSAI)による入院期間の平均は3日間で、統一健康保健システム(SUS)が保有している病床の4・2%に当たる1万3千床を占有。また、入院や治療に伴う経費は1610万レアルを超えたという。DRSAIには、コレラや腸チフス、パラチフス、細菌性赤痢、アメーバ症、下痢、腸内感染症、胃腸炎などが含まれる。DRSAIによる入院・治療費の46%は、上下水道などの普及率が低い北部で発生している。
 月毎の病床占有率と経費は、1月が5・5%で705万2472・03レアル、2月が4・6%で598万6555・61レアル、3月が2・4%で311万4028・19レアルだった。
 DRSAIが国民の健康や生活を直撃する事は、衛生環境が良好な地域ではDRSAIが少なく、経済的な余力がないなどの理由で衛生環境が整っていない地域ではDRSAIが多発する事からもわかる。
 また、現在のように新型コロナウイルスの世界的な流行が起きている時には、感染拡大抑制の意味でも衛生環境を整備する必要が高まるが、DRSAIの患者が減れば、感染症患者のための病床もより多く確保出来る。
 そういう意味で、「衛生環境整備が進んでいれば、新型コロナ感染症による死者ももう少し減っていたはず」というのは、ABESのロベルヴァウ・タヴァレス・デ・ソウザ会長だ。同氏は、衛生環境を整備する事でより多くの人の命を救えるという点は、感染症流行時だけでなく、常に考慮されるべき問題だとも強調している。

DRSAIの患者が減れば、コロナ感染者の収容にも余力が生じる?(5日付G1サイトの記事の一部)

 衛生環境の整備の度合いは基本サービスの普及率でもわかる。ABESによると、今回調査した1800市の内で、上下水道やごみの回収という基本サービスが市全域に及んでいた市は100未満だったという。
 また、水道の不備で、浄化した水が手に入らない人は3500万人近く、下水道の不備で生活排水の垂れ流しといった問題に直面している人は1億人を超えるという。下水処理場で処理されている生活排水は46%のみだともいう。
 DRSAIで入院する患者数や病床占有率は地域格差が大きい。州都別に第1四半期の入院患者数を比べると、上位3市は、パラー州ベレンの217人、セアラー州フォルタレーザの269人、サンパウロの252人だが、各市のSUSの病床占有率は、ベレンが7・7%、フォルタレーザが4・4%、サンパウロが1・4%だった。
 ソウザ氏によると、ベレン、マナウス(アマゾナス州)、マカパー(アマパー州)は衛生環境が劣悪で、DRSAIによる入院患者が多い。衛生環境が全国一劣悪なのはベレンで、水道普及率は70・3%、下水回収率は13・6%だ。
 これに対し、全国一衛生環境が整っているサンパウロは、水道普及率が99・3%、下水回収率も96・3%となっている。(5日付G1サイトより)