《ブラジル》コロナ数字隠蔽に国内外から抗議殺到=最高裁が即時開示命じる=死者4万人越え目前

従来の時間帯に戻って行われた8日夜の保健省の定例会見の様子(Anderson Riedel/PR)

 【既報関連】新型コロナウイルスの感染者数や死者数に関する報告形態や時間帯を変えた事で、国内外から批判された保健省が、8日夜、「今後は、累計も含めた全てのデータを更新し、より早い時間に公表する」と約束したと8、9日付現地紙、サイトが報じた。9日は実際に午後7時までに発表され、1日の死者数1272人(計3万8406人)、感染者3万2091人(計73万9503人)だった。
 コロナ禍に関する公式データの公表が夜10時頃にずれ込み始めたのは3日で、5日からは新たに登録された数字だけを公表。世界中の1日の感染者増加数が過去最多となった7日は、感染者、死者の双方でまるっきり異なる数字を発表するなど、混乱が続いた。
 正確な情報が得られない事は医療現場にも影響を及ぼすため、世界保健機関なども従来通りの情報公開を要請。国内では複数のメディアが相互に協力し、州保健局の情報に基づいた最新情報を流す体制も作り上げた。
 国内メディアの協力で8日夜に発表された感染者数は、前日比1万9631人増の71万887人、死者は849人増の3万7312人だった。ただ、7日夜の時点での数字が保健省のものとは異なり、公式統計との間には若干の差がある。
 他方、保健省はメディアに先立ち、新たに登録された感染者数は1万5654人、死者数は679人と発表。前日までの数字に加算すると、感染者の総数は70万7412人、死者の累計は3万7134人となる。
 保健省は同夜、「7日に起きた数字の差は複数の州保健局が報告書を訂正したために生じたもの」と説明。今後の死者数のグラフは死亡した日を基に作成するが、死者の総数は、国際ルールに従い、その日に登録された数を加算していく方法をとる意向も表明した。だが同省サイトは9日朝も、8日に登録された感染者と死者、回復患者の数しか掲載していない。
 このような状況下、最高裁のアレシャンドレ・デ・モラエス判事は9日朝、複数政党の訴えを受け、感染者や死者の数、発生率、死亡率などの詳細な情報公開を即刻再開するよう命じた。

 同判事は、この予備判断を下した理由を、「コロナ禍は非常に現実的かつ深刻」で、「正しい情報の収集や報告などは、各種の政策や諸計画を決めたり、国民が実態を知るために不可欠で、情報開示の停止は、保健システムや感染拡大抑制に影響し、国民にも悲惨な結果をもたらす」と説明している。
 ボルソナロ大統領が公式データの公表のあり方の変化について、「州や市が予算獲得のために数字を改ざんしている」と語った事は、連邦直轄区と26州の保健局からなる全国保健局審議会(Conass)の強い反発を招き、情報開示に向けた独自の動きも生じた。
 また、連邦検察庁は6日、保健省が公式データの発表を遅らせ、内容まで変更した理由などの調査を開始。一連の変化が生じた理由や経緯の説明を、保健省に求める意向も表明していた。
 保健省は8日夜、今後は午後6時半までに公式データを公表する意向である事も表明している。