《ブラジル》11日にコロナ死者4万人超え確実=隔離緩和の動き拡大へ

サンパウロ州の定例会見(左からブルーノ・コーヴァス・サンパウロ市市長、ジョアン・ドリア・サンパウロ州知事、ジョゼ・エンリケ・ジェルマン州保健局長、Governo do Estado de São Paulo)

 【既報関連】新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、隔離緩和の動きが続き、裁判沙汰や混乱も起きていると9、10日付現地紙、サイトが報じた。
 政府による数字隠蔽などの混乱が起きていた保健省の公式サイトは、最高裁の命令後、詳細な情報掲載を再開した。それによると、10日現在の1日の感染者は3万2913人(計77万2416人)、死者は1274人(計3万9680人)で11日に4万人超えが確実となった。
 コロナ感染は地域差が大きい上、検査実施率が低い州があることもあって実態把握は難しく、対策や実態に差がある。9日に1日の死者数で新記録を更新したサンパウロ州では、サンパウロ市が10日に商店、11日にはショッピングセンターの営業再開を認めた。他国での隔離緩和は感染者や死者が減り始めてから一定期間後に行われているが、ブラジルではそうではない。実際に、一足先に営業再開を認めたカンピーナス市では感染者や死者増加を招いている。
 社会隔離はコロナの感染拡大を減速させ、医療崩壊を回避または遅延させた。逆にいえば、感染者などが増加傾向にある段階での隔離緩和は、感染再燃を招き得る。だから4月半ばに隔離を緩和したイランは、5月以降、感染が再燃した。隣国チリも隔離緩和後に新たな感染拡大が起き、5月半ばからはロックダウン(都市封鎖)も起きている。緩和後の隔離再強化は、国民の反発を招きやすく、デモも起きている。
 国内では、5月21日に商業活動を再開したミナス州ベロ・オリゾンテ市(BH)で、5月25日は48%だった集中治療室の占有率が、7日には過去最高の72%まで跳ね上がった例がある。ブラジル南部でも、商業活動再開後に感染者が増え、都市封鎖を行った市がある。
 サンパウロ州では、コロナが死因と疑われる例も含む呼吸器系疾患による死者数が、3月16~4月6日は1日平均で5・1%増えた。4月7~20日は平均0・1%減ったが、4月21日~5月19日は再び、平均5・89%増えた。これらの数字は社会隔離導入と隔離率低下を反映している。呼吸器系疾患による死者は、コロナの死者が少ない州でも増えている。

 このように、隔離緩和の時期は慎重に見極める必要があり、緩和後も、社会的な距離を保つ、手指を洗う、混雑を避けるなどの配慮が必要だ。
 リオでは州と市の間に、緩和に関する見解に差がある。緩和後に渋滞や混雑も再発し、裁判所が緩和を禁じた後、別の判事が緩和を認めるといった混乱も生じている。
 サンパウロ市では、ショッピングセンターも含む商業施設には、営業時間短縮、社会的距離を保つための印付けや入場者数制限、アルコール設置、試着室は閉じるなどの工夫を義務づけた。混雑を回避するため、ショッピングセンターと一般商店は別々の時間帯で営業する。