フォーリャ・デ・サンパウロ紙寄稿=日本人ブラジル移住の日に両国の絆を祝うことが必要=駐ブラジル日本国特命全権大使 山田 彰

山田大使

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(編注=6月18日、山田彰駐ブラジル日本国大使は「日本人移民の日」にあわせ、オーリャ紙へ寄稿して掲載された。日本語の内容は次の通り。日本大使館ホームページでも、ポルトガル語版(https://www.br.emb-japan.go.jp/files/100065897.pdf)、日本語版(https://www.br.emb-japan.go.jp/files/100065889.pdf)が掲載されている)

 日本とブラジルは、自由、民主主義、人権の尊重、法の支配といった基本的価値を共有する戦略的グローバル・パートナーである。その両国の緊密な友好関係の礎となっているのが、海外で最大の約200万人の日系人、及び約20万人の在日ブラジル人の存在という、特別な人的な絆である。
 6月18日は、1908年にブラジルへの初の日本人移住者がサントスに到着した「日系移民の日」だ。日本人移住者及び日系人は、移住後に大変な苦労を味わったが、勤勉に努力を重ね、ブラジルの発展に大きく貢献してきた。
 例えば、「不毛の大地」と呼ばれたセラード地域を世界有数の農業生産地域に発展させた、日ブラジルの協力事業の中で日系人は農業開発に貢献した。そのセラードに位置するブラジリアは、本年建設60周年を迎えたことをお祝い申し上げる。
 その建設に際しても、当時のジュセリーノ・クビチェック大統領による、首都の消費をまかなう野菜、果物等の食料生産の協力の呼びかけに日系人は応えた。現在、各界の幅広い分野で日系人が活躍している。その活躍によって、日系人はブラジル社会の信頼を勝ち得ており、その尽力に改めて敬意を表したい。
 日系社会は、日本の文化や美徳・価値をブラジル国内で伝播し、日本に関心を持つきっかけを与えてくれる、両国の交流の重要な架け橋だ。他方、時代の流れと共に日系社会も変容している。 第1に、若い世代の日系人が増加する中、彼らによる活動も活発に行われている。例えば、サンパウロでは、若手日系人が街の清掃活動を展開し、日本の清掃・衛生文化の価値を伝承している。
 ブラジリアでは、若手日系人が日系の企業家のネットワークの強化に向けた取組を推進している。若手日系人の間で日系人としてのアイデンティティが喚起・維持されていくよう、彼らの取組を日本政府としても後押ししていきたい。
 また、ブラジルの未来を担う彼らと日本の若い世代との間の絆を深めるための交流事業も引き続き拡充していきたい。第2に、日本に関心を持つ非日系ブラジル人も日系社会の活動に参加している。
 例えば、サンパウロで若手日系人を中心に進められている、日系人のアイデンティティを特定し伝承しようとする事業への参加があげられる。こうした取組も含め、今後もより多くの非日系ブラジル人が日系社会の活動を共に盛り上げてくれることを期待している。
 私は、日本とブラジルをつなぐ人的絆の大切さをかみしめながら、ブラジル政府と今後も協力して両国関係を一層発展させていくとの決意を新たにしているところである。