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ブラジルで一気見する、日本の特撮の元祖

ナショナル・キッドのDVD

ナショナル・キッドのDVD

 コロナ禍における外出自粛のあいだの過ごし方として「動画配信サービスでの映画やドラマのビンジ・ウォッチング(一気見)」というのが世界的な現象として見られた。
 外に出ても映画館もコンサート会場も、スポーツ・スタジアムも開いていない。そんなときにできることと言えば、家にこもって何かをすることだが、こういうときにやりやすいのが「これまで見損ねていた映画やドラマを、この機会に見ること」。さいわい今はネットで会費さえ払えば見放題のサービスもある。実際、ネットフリックスやアマゾン・プライムといった動画配信サービスの大手は、このコロナ禍にその存在を大きくアピールしている。
 コラム子もこの機会に多くの作品を一気見したが、そんな中でひとつ気になるものを見つけた。それはブラジルのアマゾン・プライムにあった「ナショナル・キッド」という、日本の作品。日本の人は殆ど知らないだろうが、これはブラジルにとって、日本との接点となった、知る人ぞ知る大事な作品だ。
 ブラジル版の動画配信サービスで視聴可能な日本の作品というのは、最近の作品でさえもそこまで多くないのだが、この「ナショナル・キッド」は、日本で放映されたのが1960年。東映が手掛けた初のSF特撮で、モノクロ作品だ。日本で民放テレビの放送がはじまったのが1953年のことなので、テレビ草創期の貴重な番組だ。
 この作品は日本での放映時は、「特撮ヒーローの元祖」と呼ばれた「月光仮面」などと比べると注目度は低く、それほど話題にはなっていなかったという。だが、それがどういうわけだか1964年にブラジルに輸出され、レコルデ局で放送されると大ヒット。90年代、「ジャスピオン」や「ジライヤ」といった日本の特撮ブームが局部的に起こった際も、その元祖としてリバイバル放映されている。
 その影響で90年代にはビデオ、2009年にはDVDで発売もされた。コラム子も当時、パウリスタ大通りの大型書店で本作のDVDがショー・ウインドーに飾られているのを見て驚いたのを覚えている。
 今回、本作がブラジルの動画配信サービスに入れられたのも、こうした実績があるからだろう。DVDまでは買う勇気のなかったコラム子も、これを機に見てみることにした。
 すると、目の前に広がったのは、普段もうほとんど見ることのできなくなった、かなり貴重な光景だった。児童合唱団による唱歌の主題歌に乗ってナショナル・キッドが紹介されるわけだが、そこには「提供・松下電器」の文字が。ヒーローが番組スポンサーの名前をつけた例というのは、国際的に見ても、後にも先にもこれ以外はないだろう。
 そして映像的にも強烈だった。空飛ぶ円盤には肉眼ではっきり見える針金。円盤の縮尺も不自然で学校の工作のようにも見える。ストーリーも、主人公が政府に呼ばれるほど重要な研究をしている科学者なのに、なぜかそこに小学校の子どもたちが親しげに出入りしており、「宇宙からの侵略者」が大の大人なのにその子どもたちをいじめようとし、そこに前置きもなくナショナル・キッドが登場し、子どもたちを助ける、という筋書き。残念ながらすべてポルトガル語吹き替えだ。
 ブラジルでのこうした状況を知らないで見ると、そこまで響かないかもしれない。だが、放映当時、まだ多くの国が挑戦していなかった「正義のヒーロー」の特撮を作ろうとしたその努力は買いたくなるものがあるし、だからこそ、その気持が届く国もあったのだろう。こうしたことは、事情を知ったものが紹介して行く必要があるのではと思った次第だ。
 また、だからこそ、日本も積極的に映画やドラマを海外に紹介すべきだとも思った。50〜70年代の映画なら聖市に日本映画専門館が3館もあった時代にたくさん紹介されているし、今日でも古い日本映画を研究しているブラジル人マニアも少なくないわけだから。(陽)
 

 
 

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