新型コロナと共生するには=桜田医院の医師らに聞く=感染予防と対策の具体例=お勧めはオンライン診療

オンライン取材の様子

 「新型コロナでの経済活動再開につき皆さんから不安な声を聞きます。未知の部分が多い病気ですが、このインタビューを通して現状で解っている感染対策、もしかかった場合の治療法を知っていただき出来るだけ安全な復帰ができてもらえば嬉しいです」――サンパウロ市パウリスタ大通りに桜田医院を構える桜田ローザ院長(56歳・二世)は、今回のオンライン取材でそう語った。

南米一の優良病院が集まるサンパウロ市

 サンパウロ市には南米有数の優良病院が集中している。例えばシリオ・リバネース病院はレバノン人移民コミュニティが1921年に始め、最新医療施設を整えるようになり、2000年以降だけでルーラ大統領、ジウマ大統領、テーメル大統領の手術を担当していることでも知られる。
 そのほか、ユダヤ系コミュニティが作ったアルベルト・アインシュタイン病院では、現在のボルソナロ大統領も入院治療を受けている。公立病院ではサンパウロ州立のクリニカス病院が有名だ。州立総合大学(USP)の医学部の付属病院で、民間以上の先端医療が無料で受けられ、日系人医師ら医療従事者も多数働いている。
 さらにサンパウロ市には日系医療も多数存在する。中でも一番の目抜き通りであるパウリスタ大通りには30年間も続いてきた実績を持つ桜田医院がある。
 現在は「新型コロナ対策オンライン診療」も行っている同医院で、内村リカルド医師(50歳・三世)、平田クレオニセ医師(61歳・二世)、坂野カレン医師(47歳・三世)の3人にコロナに対する見解と対策を取材した。

内村医師「早期治療で高い回復率」

 桜田医院(診療所)は、私立歯科医院として同院長が開業。駐在員とその家族を中心に診療を行っている。4年前から、より広い範囲で患者の診療ができるよう診療科を歯科だけでなく、内科・小児科・耳鼻科も対応できるように増やし、各専門医が日本語で診察を行う。
 同医院の総合内科を担当する内村医師は、ブラジル全国に展開する私立病院チェーンでも働く内科勤務医でもある。「私が勤務するD私立病院では、私含め2人の医師でコロナ罹患入院患者を250人程診てきました。主に中度患者を担当し、その多くは一週間程の入院で回復しました。死者は持病があった1人のみで、死亡率は低いと言えます。治療には抗生物質、解熱剤、血液凝固剤服用、リハビリ、必要な時は酸素吸入器を使用し治療を行いました。集中治療室使用は少なく常に病棟数には余裕があって、ピーク時でも落ち着いた対応が出来ました」と説明した。
 「コロナウイルスは特に高齢者や糖尿病、高血圧、持病の疾患などある人は注意しないといけませんが、聞かれたような不治の病ではありません。陽性になっても1回深呼吸して心を落ち着ちつかせてください。早期治療で重症化させないで治しましょう。コロナの症状がでたり、陽性が判明した場合はすぐに治療を開始してください。より高い回復率が見られます」と勧める。
 内村医師はオンライン診察も勧める。「もし、発熱や咳、息切れ、頭痛、疲労感、鼻水、味覚の障害、その中の一つの症状が出た場合、直ちに診察し受けてください。向かった病院での院内感染を避ける為にも、極力オンライン診療が良いと思います。間違っても自分の判断で薬の処方するなどの自己療法は危険なので行わないでください」とのこと。

経験豊富な平田医師、小児科の坂田医師

 一方、同医院の耳鼻咽喉科担当で、サンパウロ連邦大学医学部にて耳鼻咽喉科学講師、私立病院にも勤める平田医師は、同医学部付属病院のコロナの現状を語る。
 「医学部付属病院は、ブラジルでも最も規模の大きい国立大学病院の中に入っています。この3か月1200人程のコロナの陽性が出た外来患者のうち198人が亡くなられました。その他、私立病院でも勤務していますが1200人のコロナ罹患者のうち死亡者は10人。公共でありながら3月から現在まで病棟は6・7割の埋まりで常に余裕がありました」と、語った。
 小児科を担当し、サンパウロ大学医学部講師も兼任する坂野医師は、「幼児はあまり重症化しない傾向がある。感染していても無症状の場合も多いです。ただし、今は外出自粛中で家の中でうつる環境にないと言う事もあり、症例数が少なく、まだ、未知の部分があります。やはり大人に比べて子供は抵抗力が弱い為、大人同様に気をつけて感染対策をする事が必要ですね」と乳幼児も感染対策が重要である事を語る。
更に「妊婦、乳幼児はコロナよりも死亡率の高いインフルエンザなどの他の感染病の予防もしっかりしないといけないです」と予防接種に呼びかけた。

桜田院長「職場復帰に備えて感染防止策立案を」

 桜田院長は、「段階的に自粛緩和を発令し、これから外に出る機会が増えるでしょう。職業柄、患者と距離の近い私たち医師が1度も感染していないので、一般の方でも感染防止策をしっかりと行えば、コロナにかかる可能性は低くなります。
 当医院では院内感染を防ぐため3月に先立ち徹底した手順のガイドを作成、実行しています。滅菌効果の強いUVC光線を設置、完全防護服を使用、患者同士が鉢合わせしない診療予定、各診療後の除菌作業、職員の通勤手段を設けたスケジュールを立てています。
 職場復帰に備え、医師の指導による個々の行動計画を作成しましょう」と語った。
 桜田医院は、院内感染を防ぐ為オンライン診療も行っている。また、同院内ではPCR検査・抗体検査も受けられる。その他インフルエンザワクチン等も接種可能。
 問い合わせ先は以下まで日本語で電話、ワッツアップ11・97724・7214/メールrosakomori@gmail.com)。医院所在地(Avenida Paulista, 491, cj. 24, São Paulo)。


お勧めの感染防止策

【外出時】
★歩行時や人との会話、対面の食事時は、1・5 m以上の距離をとる。
★必ずマスクを着用し、鼻から顎まで隠すように着ける。
★口元が蒸れにくいマスクを使用する。TNT(不識布)マスクが理想的。
★手で目や鼻など粘膜に近い部分を必要以上に触らない。
★行動範囲を必要最低限に定め寄り道を控える。
★人が密集する所を避ける。
★長距離旅行は控える。
【帰宅時】
★靴を消毒剤で消毒する。家に入る前に脱ぐ。
★石鹸で手洗いを念入りにする。
★マスクを洗剤入りの水に15分付けてから洗う(TNTマスク・布マスク共に)。
★室内に入り、そのまま着ていた服を洗濯機に入れ、シャワーを浴びる。
★配達物や購入物、その他外出時に所持していた物は殺菌を行う(プラスチック・ガラス類はアルコールを使用し、果物・野菜等の食品は水洗いを行う)
★日々持病は管理し、抵抗力をつける努力をする。