《サンパウロ市》成人11%以上がすでに抗体所持=集団免疫に近づく「でも目指さない」=高齢者の14%所持に市長警告

ブラジリアの抗体検査の様子(参考写真、Foto Renato Alves/Agência Brasília)

 サンパウロ市のブルーノ・コーヴァス市長は28日午前、3回目の抗体検査(exame sorológico)の結果に関する記者会見を行い、少なくとも市民の11・1%、18歳以上の成人約132万人がすでに新型コロナウイルスの抗体を持っていると発表した。
 サンパウロ州政府の公式統計では、サンパウロ市の罹患者は18万2027人で、今回の検査結果の方が7倍以上も多い。市保健局のエジソン・アパレシード局長は「陽性判明者のうち、39・7%は無症状者だ。これだけの多くの人が『まったく症状がない』という申告していることは驚くべきこと」と話している。
 市によると、今回の抗体検査は、2020年IPTU(土地家屋税)データベース、17年の水道メーター、家族健康戦略(ESF)プログラムから無作為に抽出した市民から、新型コロナウイルスの抗体の有無を調べたという。市内に散らばる472カ所の地区保健所(UBS)ごとに18歳以上の12人が選ばれ、自宅でサンプルを採取した。
 全部で5760世帯のうち、今月20日までに2328世帯からサンプルが回収された。アパレシード局長は「この検査の目的は市民全体の抗体所持率を把握すること。影響を受けやすい層(高齢者や既往者)に対する戦略を立案する参考にする」と説明した。
 今までに2回行われた同調査に比較して、今回の特徴的な結果となったのは、64歳以上の13・9%が抗体所持者、18~34歳が12・6%、35~49歳が12・3%だったことだ。2回目の検査では高齢者は5・1%だけだった。
 アパレシード局長は「外出した家族が感染して、在宅の高齢者に病気を持ち込んだ可能性があり、具体的な高齢者対策が必要になる」と説明。コーヴァス市長も高齢者感染の増加について「これは危険なデータであり、高齢者は罹患して死ぬ可能性が高い。この点にもっと注意喚起を強化する必要があることを示すデータだ」と強調している。
 7月6日までの結果を示した2回目の検査データでは、市民の抗体所持率は9・8%だった。所持率の高さと関係あると思われるのは、教育レベルの低さ、低所得者層、同一世帯の居住者数の多さなど、貧困や社会的脆弱性だと見られている。

 コーヴァス市長は「新型コロナウイルスはサンパウロ市の不平等さを物語っている。その所持率は、Aクラス(富裕層)よりもDクラス(低所得者層)の方が4倍も高く、貧しい人ほどウイルスに感染しやすい。初等教育しか受けていない人の発症率は、高等教育を受けている人に比べて2倍以上で、人種間格差の問題もある。黒人や褐色人種は、白人よりも市内でウイルスに感染する確率が60%も高い」と指摘する。
 今回の調査によると、抗体所持率は初等教育のみ修了者(16・4%)、褐色・黒色人種(14・1%)、Eクラス(極貧困層)(17・7%)、他に4人以上の同居者がいる家族(11・7%)、社会的距離をとらない人(25・2%)となっている。そのほか社会的に孤立した人の所持率は8・5と低め。所持率が最も高いのは無職(15・1%)と個人事業者(14・3%)。
 そのほか、所持者の39・7%が無症状であるのに対し、60・3%にはコロナ症状の自覚があった。公共の場でのマスク着用に関しては、「時々しかマスクをしない人」は30・5%が抗体を所持しており、「だいたいしている人」は21・8%、「必ずしている人」は9%の順で低くなっている。
 市内の地域別では、貧しい人が多くすむ南部が16・1%と最も多く、次いで同じ特徴を持つ東部13・3%となっている。南東部9・3%、北部9・3%、北部8・2%、中西部3・7%と順に下がっている。
 次の4回目の検査では、子どもや青年も対象とした調査が実施される予定。アパレシード局長は次回に関して、特に5人以上が同居する世帯を対象とする考えだ。9回目まで15日おきに実施される。
 一方、サンパウロ市が集団免疫になる可能性について同局長は、「まだ断定できない」と慎重に答え、「他国の研究では集団免疫状態になるには、世界保健機関が言う数字(50%~80%)よりも低い場合があるという結果も発表されている。それをこの調査で立証できるかもしれない。もしかしたらサンパウロ市はかなり早く集団免疫を獲得できるかもしれない」と期待している。
 ただしエジャネ・トレロン保健局次長は、「抗体所持率は、医療システムを圧迫しないように、ゆっくりと上げなければならない。集団免疫は目指すべきことではない。それを期待するのではなく、あくまでも感染抑制を目指すべきだ」と話している。