《ベイルート》大規模爆発でゴーン自宅損傷=妻「大丈夫だが、自宅壊れた」=人的交流深いブラジル政府連帯示す

爆発現場近くを捜索する消防員(CivilDefenseLB)

 エスタード・デ・サンパウロ紙は4日、日本の司法の手を逃れてレバノン首都ベイルートに逃亡中の元ルノー・日産会長カルロス・ゴーン容疑者の妻キャロルさんに独占取材し、「私たちはみんな大丈夫ですが、自宅が壊され、ベイルートの全てが破壊されました」と語っていると報じた。
 ゴーン容疑者の自宅は、爆発があった港から5キロほど離れたベイルート市の閑静な上流階級居住区にある。高級レストランや国際的なホテルが建つ活気ある地域だが、それでも爆発の被害に遭ったという。
 ゴーン容疑者は日産の不正行為を告発され日本から逃亡した後、今年1月にレバノンで初のインタビューに応じて注目された。18年末、国外旅行から戻った際に日本で逮捕された同容疑者は、拘置所で数カ月間過ごし、昨年12月に東京での軟禁状態から脱走した。
 しかし、ゴーン容疑者がレバノンに到着したのは、同国経済が〝完璧な暴風雨〟的時期で、市民は銀行預金の引き出しすらできない規制に苦しんでいた。優れた経営者としての評判を持つゴーン氏は、預金引き出しリスクに苦しむ市民はもとより、一部の政治家にとっても、国家運営の救世主的なイメージをもたれていた。
 しかし、同氏は同国の公職に就くことを否定し、この間、ひっそりと過ごしてきた。同氏は内陸部にあるワイナリーなど、いくつかのビジネスを維持しているという。
 エポカ誌サイト4日付には、ベイルート在住13年、旅行社を経営するブラジル人ジュリア・イブラインさんが、「地震か何かで私の住んでいるアパートが崩れるのか、真っ二つに割れるのかと思った。最初の揺れを感じたときに小さな子供二人を捕まえて廊下へと走った。何が起きているか分からず、ひたすら叫んだ。建物が揺れて、窓が割れて落ち始め、子供を抱きしめながら死ぬと思ったわ」との爆発恐怖体験を語っている。

 アジェンシア・ブラジル4日付によれば、ブラジル連邦政府は次のようなメッセージを出した。「政府は本日、ベイルート港湾部で起きた重大な爆発事故に関し、レバノン政府と、重傷を負ったり亡くなるなどの被害を受けた国民に連帯の気持ちを表します」。
 ブラジル国外務省は「今のところ、ブラジル国民で死者、重傷者は報告されていない」とし、爆発現場から8キロ地点にあるブラジル大使館は、現地在住のブラジル人を支援すべく電話とメール連絡を受け付けているという。ガラスの破片で怪我をして病院に運び込まれたブラジル人が一人いると報道されている。ブラジル海軍の艦船がベイルート湾のすぐ外にいたが、特に被害は受けていないとのこと。
 ブラジルへのレバノン移民開始は1880年で、その子孫総数は800万人と言われる。サンパウロ州を中心に、リオ州、ミナス州、セアラー州、ペルナンブッコ州、アマゾナス州などで商業に従事するものが多く、政治家を多く輩出している。
 有名な子孫としては、カルロス・ゴーン氏以外にも、ミッシェル・テメル前大統領、ジェラルド・アウキミン元サンパウロ州知事、フェルナンド・アダジ元サンパウロ市長、グローボ若手女優のフェルナンダ・コスタ、インディカーレーサーのトニー・カナンなど錚々たる現役メンバーがそろっている。