≪サンパウロ市≫成人の18%が新型コロナ抗体所持=新検査の併用で実態明らかに=低所得、低学歴、黒人ほど高率

サンパウロ市セントロのサンタエフィジェニオ街の様子(Cacalos Garrastazu/FotosPublicas)

 サンパウロ州立総合大学(USP)とサンパウロ連邦大学(Unifesp)の研究グループは、サンパウロ市民を対象とした第3回抗体検査を行い、抗体所持率が17・9%であることが判明した。7月20日から同29日まで、18歳以上の住民1470人を対象に行われたもの。この割合からすれば、市民のうち約150万人が新型コロナウイルスに感染済みだと推定できると発表した。
 この研究は、トドス・ペラ・サウーデ、セメイア研究所、フレウリ研究所、イボペ・インテリジェンシアの各専門家が参加。市全域の115地域から全所得層にわたる家庭からサンプルが回収された。
 今回は、2種類の抗体検査を同時に実施した。どちらかの検査でしか陽性反応を検出できなかったケースも含めて、1470人のうち262人から陽性反応が見られた。同研究グループ責任者で生物学者のフェルナンド・レイナッキ氏は「一つの検査だけではすべての陽性者を識別するのに十分ではない。2つの検査とも陽性になるケースもあれば、古い検査でしか陽性にならないケースや、新しい検査でしか検出されないケースもある」と説明する。
 今回の研究で確認された抗体所持率(約18%)は、第2回検査の11・4%を上回っている。ただし今回も古い検査方法だけが実施されていた場合、前回検査とあまり変わらない11・5%ていどの結果しか判明しなかったという。そのため、レイナッキ氏は感染は加速していないと見ており、「感染は少しずつ広がっていることは素晴らしいニュースだ」と話している。
 この抗体検査の研究は、「集団免疫」に近づいているか否かを調べるもの。集団免疫の人口割合はまだ明らかになっていないが、新型コロナの場合、今のところ20%から60%の間と見られている。

 8日時点のサンパウロ市のコロナ公式死者数は計1万100人で、確認された公式感染者数は計24万6600人だった。今回の検査では約150万人が抗体を所持していると見られているから、少なくとも84%の感染例が公式には報告されていないことになる。
 第3回の抗体検査の結果によると、最も抗体所持率が高いグループは黒人や褐色の女性、低所得者および低学歴者。女性は18・4%、男性は17・8%。肌の色・人種別の分類では、黒人・褐色を自称する対象者の20・8%、白人の15・4%に抗体が認められた。
 所得階層別では、貧困層のほど抗体所持者が多い。最低所得者層(3349レアルまで)が22%、中間所得者層(3350~5540レアル)が18・4%、最高所得者層(5541レアル以上)が9・4%だった。
 初等教育が不完全な人の所持率は22・5%、完全な人は23・7%、中等教育者で17・5%、高等教育者で12%と高学歴ほど減少する傾向がみられた。年齢区分では、抗体所持率が最も高いグループは40~49歳(22%)で、最も低かったのは60歳以上のグループ(15・8%)だった。