JICA=日系社会リーダー育成事業=中南米研修生25人参加(上)=「好きな領域を持って!」

1日目の研修の様子。左上は通訳のメリッサ・ヴォトさん、右上が真鍋さん(JICA提供)

1日目の研修の様子。左上は通訳のメリッサ・ヴォトさん、右上が真鍋さん(JICA提供)

 「ぜひ皆さんには日本で一つ好きなものを見て受けて、母国に持ち帰ってほしい」――日本と母国をつなぐ次世代リーダーとしてオンライン研修に参加する研修生に対し、講師のクリーク・アンド・リバー社の松永雄さんは、そう声援を送った。国際協力機構(JICA)は9月2日・4日・10日の3日間、「プロフェッショナルの力で世界を変えていく」をテーマに、世界に向けて文化発信を行う和太鼓集団天邪鬼の真鍋徹也さんと落語家の立川志の春さんを講師に迎え、それぞれの分野の魅力や活動について耳を傾けた。

 

 「日系社会リーダー育成事業」で訪日済みの留学生19人と待機中の6人がオンライン研修に参加し、最終日の10日には9つの班にわかれ各人が思う「リーダー像」について話し合い、各グループで例を挙げてプレゼンを行った。
 研修生のプレゼン後に松永さんは、前2日の講師や研修生達の挙げたリーダーに共通することとして「何より〝好きな領域〟を持つこと」を挙げた。さらに「好きなものは誰かに話したくなり、話すことで挑戦の機会が生まれる。障害を越えるモチベーションにもなる」と付け加える。
 主体的に動くことで、内観でき自分のリーダーの経験値を積み重ねることが出来ると説明し「リーダーにはマニュアルはなく、気持ちがあれば誰にでもなれます」と力説する。
 ブラジルからは9人が3チームにわかれて「リーダー像」をプレゼンした。各チームではそれぞれ、政治家のエリカ・マルングゥイニョ、J・R・R・トールキン著「指輪物語」からガンダルフ、元プロ野球選と監督を経て解説者となった落合博満を取り上げた。
 落合博満を取り上げたグループのヌネス・ダニエラさん、宮部マルコス・たけしさん、土橋諭フェルナンドさんはリーダーに必要な要素として落合の俺流スタイル「自分の軸をもつ」「次世代を育てる力」や、落合さんと前2日間の講師に共通する要素として「常識に捉われない」ことを挙げている。
 ブラジル以外の中南米からの参加者が挙げたリーダー像には、日産メキシコのマイラ・ゴンザレス社長、日系コロンビア人のヨコイ・ケンジ、天文学者のマリア・テレサ・ルイズ、ミュージシャンで薬草学の研究や保護活動を行うアロンソ・デル・リオ、大阪なおみ、漫画「ワンピース」のモンキー・D・ルフィーと「進撃の巨人」のエルヴィン・スミスなどがあった。
 日本のJICA中南米部計画・移住課の藤井寛之(ふじい・ひろゆき)さんは「国や世代が違えば価値観も違う。その中で自分自身のリーダー像を磨き、次の活躍へ活かして欲しい」と次世代へのリーダー達へ大きな期待を語った。(つづく)

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 日系社会リーダー育成事業のオンライン研修で講師として招かれた真鍋徹也さんは東京を拠点に世界50カ国以上で公演を行う「和太鼓集団天邪鬼」に所属しており、和太鼓に現代的要素を取り入れ新たな和太鼓音楽へ取り組んでいる。また、立川志の春さんはイェール大学を卒業後、三井物産を経て立川志の輔に入門。英語落語や、シェイクスピア、人物伝など色々な形の落語に挑戦している。研修でも英語による落語を披露している。ブラジル日系社会にも、ぜひ伝統を受け継ぎながらも、新しい風を吹き込む人に現れて欲しいところ。