《ブラジル》即時振り込み新方式Pix=24時間即時送金の優れモノ=11月から稼動開始

Pixについて説明するサイトの一つ

 中銀が2月に導入を発表したPix(即時支払い)の正式稼働まで2カ月を切り、金融機関が諸準備や顧客確保に躍起になっている。
 即時支払い(pagamentos instantaneos)の新しい方法Pixは、場所や時間を選ばず、週7日間、1日24時間機能する上、相手先にはリアルタイムで入金されるという優れモノだ。
 この点は、DOCやTEDと呼ばれる送金手段が、営業日に銀行の営業時間内でしか機能しない点と大きく異なる。DOCは4999・99レアルまでしか送金できず、入金されるのは翌日。TEDは送金当日に入金されるが、銀行の営業時間内でしか扱わない。小切手や現金を振り込む場合も、相手側に入金されるまでは最大90分かかるが、Pixは10秒とかからない。
 同様の即時送金プログラムはワッツアップも打ち出したが、中銀がPix導入を打ち出した後、導入を諦めたという経緯がある。
 新型コロナウイルスの感染拡大で銀行に出かけたり、現金自動預け入れ支払機(ATM)を利用したりしての支払いや送金を嫌う人が急増し、アプリを使っての支払いや送金が、店頭やATMでの支払いなどにとって代わっているのが実情だ。
 Pixの利点は、銀行などに出向く必要がない事や、24時間、どこででも支払いや送金が行える事、指定した金額がリアルタイムで相手の口座に入金される事だけではない。
 銀行送金の場合、送金先の人物や企業などの口座がある銀行や支店の名前(番号)、口座番号などの情報が必要だが、Pixでは受取人を特定する「カギ(chave)」とQRコードがあれば事が足りる。

 一般顧客向けのPixが正式に稼働し始めるのは11月16日からで、各金融機関では現在、Pixを稼働させるために必要な安全対策その他を中銀に届け、試験運用を行う一方、顧客がPixを利用するために必要な情報の登録に向けた準備を進めている。
 金融機関がPix稼働のために必要な資材や機材の準備を終え、顧客の情報登録を受け付け始めるのは10月5日から。
 だが、各金融機関は争うようにして、Pixに関する情報を流し、サイトなどを通じた顧客情報の前倒し登録を行っているという。これは、納税者番号(個人ならCPF、法人ならCNPJ)やeメール、携帯電話の番号という「鍵(chave)」を、唯一の銀行口座にひも付けするためだ。
 既にインターネットバンキングや携帯電話のアプリを利用している人の場合は、新しいアプリをダウンロードしなくても利用できるとアピールしている銀行もあるので、現在利用している銀行のサイトや店頭で事前登録などについて確認してみると良い。Pixは通常の銀行でもヴァーチャルの銀行でも利用できる。
 なお、新型コロナのパンデミック宣言後、デジタル情報を悪用した犯罪が増えている中、Pix関連の「鍵」その他の情報は中銀が統括、管理するシステムに保管されるため安全だ、と中銀は強調している。