【日本移民112周年記念】移民の日に寄せて=ブラジル日本文化福祉協会会長 石川レナト

石川会長

 ブラジル日本移民112周年におけるニッケイ新聞社の「移民の日特別号」の発行にあたり、まずは今日のブラジル日系社会の繁栄を築いた先駆移民の御苦労を偲び、開拓先没者の御霊に対し衷心より哀悼の意を表します。
 移民112周年という長い年月が経った現在、我々は、先祖代々受け継がれてきた精神を絶やすことなく、日本人移民の子孫である我々の孫、曾孫世代はもとより、ブラジル社会全体に至るまで、その精神を普及する使命と責任があることをひしひしと感じております。
 そしてそれは、毎年移民の日である6月18日に、日本移民先亡者の追悼法要を行うことを通して、移民の歴史に刻まれた先駆者らの倫理的および道徳的価値感を、ここブラジルにおいて維持でき得る一つの象徴的かつ重要な儀式だと捉えております。
 よって、私たちは信じられないほどの苦痛を人類に引き起こした新型コロナウイルス感染症パンデミックに直面し、社会的隔離措置を余儀なくされておりましても、この大事な移民の日の法要は何が何でも行うべきと、試行錯誤のもとオンラインによる開催を決行致しました。
 これはやむを得ずに取った手段ではありましたが、「足腰が弱って外出困難な両親が、オンライン法要に参加することが出来て大変喜んでいました」という感謝の言葉や、「文協のサイトでオンライン法要を知り、大変興味深く拝見しました」という日本からのメッセージも多数寄せられ、思わぬ副産物も生じました。 
 その中でも特に、ブラジル日系人の若者らから多くのコメントが寄せられたことが、世代交代を迎える我々日系社会にとって、何より嬉しい反響でありました。
さて、この感染症に打ち勝つために必要なのは、移民112年の歳月を持ってなお今もブラジル日系社会の根底に流れ続けている精神、「協力」「援護」「連帯」「共感」を高め、実際に行動に移すことではないかと考えます。
 昼夜を問わず献身的に仕事に取組み、あらゆる困難に立ち向かい、それを乗り越えてきた偉大なるブラジル日本人移民の子孫の一人であるという事実を顧みるとき、体の奥底から暖かい力が沸き上がるのを感じるのは、決して私だけではないと存じます。
ニッケイ新聞社の「移民の日特別号」の発行にあたり、改めて先駆者への敬意と尊敬の念を表し、日本移民先亡者に祈りを捧げると同時に、新型コロナウイルス感染症で失われた何十万人もの命に対し哀悼の意を表したいと存じます。
最後に、私たちがより強く、より支え合い、より団結し、ニッケイ新聞購読者の皆さまの健康が守られ、一日も早いパンデミックの終息を迎えて私たちの活動が再開されることを心からお祈り申し上げます。