サンパウロ市市長選=今後の鍵握る選挙放送開始=持ち時間豊富なコーヴァス=ルッソマノは逃げ切り狙い=ネットで巻き返すかボウロス

(左より)ルッソマノ、コーヴァス、ボウロス氏(Twitter)

 9日、全国で市長選の選挙放送が始まった。投票日の3日前まで毎日テレビとラジオで放送される、投票者への影響力が強い放送の開始で、選挙戦がどう変わっていくかが注目されている。9日付現地紙が報じている。
 選挙放送は、9日から11月12日まで続けられる。放送が行われるのはテレビ局、ラジオ局全般で、基本は1日2ブロックに分かれて10分ずつの放送だ。テレビでは13時から13時10分、20時30分から40分。ラジオでは7時から7時10分、12時から12時10分の2回だ。
 これに加えて、各局で1日70分ずつ与えられた選挙放送スポットがある。これらは30秒、もしくは60秒のコマーシャルで構成されており、60%が市長候補によるもの、40%が市議候補に当てられる。
 割り当て時間は、その候補者が所属する政党が2018年の下院議員選挙で得た議席数に比例して決められるが、副候補や連立政党の時間もプラスされるので、多くの政党と連立を組むほど有利になる。
 サンパウロ市の場合は、現職のブルーノ・コーヴァス氏が有利で、所属の民主社会党(PSDB)と副候補のリカルド・ヌーネス氏が所属する民主運動(MDB)の持ち時間に加え、民主党(DEM)、キリスト教社会党(PSC)、進歩党(PP)、緑の党(PV)、自由党(PL)、シダダニア、ポデモスなどとの連立により、10分の選挙放送の約35%にあたる3分29秒ほどを利用できる。

 最新のダッタフォーリャの世論調査では、コーヴァス氏は21%の支持率で2位だが、支持率27%で1位のセルソ・ルッソマノ氏(共和者・RP)の51秒の3倍以上の時間で追い上げを狙う。
 今年の場合、各放送局で行われる候補者たちによる討論会が、コロナ禍を理由に続々キャンセルされているため、テレビでのアピールでは、選挙放送がこれまで以上に重要な意味を持っている。
 だが、2018年の大統領選で、選挙放送の持ち時間が極めて少なかったボルソナロ氏が勝利し、持ち時間で圧倒的に有利だったジェラルド・アウキミン氏が惨敗した。このように選挙放送での不利をネット展開で補うケースも最近では見られている。
 最新のダッタフォーリャのサンパウロ市市長選世論調査では12%の支持率で3位のギリェルメ・ボウロス氏(社会主義自由党・PSOL)の場合、持ち時間はわずか17秒だが、ネットのフォロワーは200万人近い。
 選挙放送でのイメージ戦略も有権者にアピールするための鍵を握っている。始まったばかりの選挙放送では、ルッソマノ氏がボルソナロ大統領、コーヴァス市長は祖父マリオ・コーヴァス元サンパウロ州知事、1%ほどの支持で苦戦しているジウマール・タット氏(労働者党・PT)はルーラ元大統領、ボウロス氏が人気俳優のヴァギネル・モウラを、それぞれ画面に登場させている。