《ブラジル》森林火災激増中に消防士へ帰還命令=環境院「活動資金尽きた」=現政権へ出し惜しみ批判も

環境相が消防士らに帰還を命じた事などを報じた22日付エスタード紙電子版の記事の一部

 国立再生可能天然資源・環境院(Ibama)が21日、活動資金が尽きた事を理由に全国で活動中の消防士に基地に戻るよう命じたと21、22日付現地紙、サイトが報じた。
 ブラジルは昨年来、法定アマゾンやパンタナルなどでの森林伐採や森林火災が増えており、国際社会からの批判の的となっている。
 欧州連合(EU)が先日、南米南部共同市場(メルコスル)との自由貿易協定承認はブラジルの環境政策次第との姿勢を改めて示したのも、法定アマゾンでの伐採や火災増加が直接的な原因だ。
 ボルソナロ大統領は22日、アマゾンでは1ヘクタールたりとも伐採されておらず、森林火災も起きていないと強調した。だが少なくとも、1月~9月9日の法定アマゾンでの森林火災は5万6425件で、昨年同期より6%増えた。森林伐採や森林火災の取り締まりなどを行うために派遣された軍の任期も、先日延長されたばかり。
 パンタナルでの火災は史上最悪の記録を更新中で、全国から精鋭を集めた国家治安部隊も派遣されている。
 このように、全国で森林伐採や森林火災が広がる中、消防士への帰還命令が出たのは極めて異常。ただ、リカルド・サレス環境相が8月末、経済省が資金を凍結している事を理由に消防士の活動停止を発表したら、アマゾン審議会議長のモウロン副大統領が差し止めたという経緯もあった。
 環境監視機関のIbamaや生物の多様性保全のためのシコ・メンデス研究所(ICMBio)は職員が減った上、予算凍結や減額で活動に支障をきたしているとかなり前から言われていた。

 22日付現地紙サイトによると、Ibamaの負債は1600万レアルを超え、ICMBioの800万レアル超と合わせた総額は2500万レアル近いという。その中身は、各地の基地や本部の電気代、燃料費、小型機の賃借料などで、支払いが90日以上滞っているものもあるという。
 今年の環境省とIbama、ICMBioの予算は5億6300万レアルだが、経済省は2億3千万レアルを凍結。環境相が8月に活動停止を発表した時は9600万レアルを支払ったが、残額は凍結されたままだ。
 Ibamaはその後も資金解放を要請したが、経済省は9月21日の会議で承認されていないと返答。引き出し額が上限を超えたとして諸外国からの寄付金で創設されたアマゾン基金の利用も禁じているため、万策尽きたIbamaは消防士への帰還命令を出す事を余儀なくされた。
 22日のサイト情報によると、サレス環境相はICMBioの活動停止と帰還も命じており、国内の森林火災は軍や国家治安部隊、地元消防隊、ボランティアの手に委ねられる事になる。
 全国環境特殊キャリア公務員協会は22日、「現政権が森林火災や環境監視、科学技術、保健衛生、コロナ感染症への予防・撲滅資金を出し惜しんでいるのは驚くべき事」で、「アマゾン基金に終止符を打ち、資金を枯渇させながら、金はないという」「命がけで活動しているのに、最低限の支援もないなら、活動は続けられない」との声明を出した。