《ブラジル》統一地方選=選挙絡みの殺人犠牲者76人=9月17日以降は3日に1人

9月に起きた仕儀候補のレミス氏殺害事件に言及している10月26日付エスタード紙

 統一地方選の投票日まで10日となったが、今年は政治的な理由での殺害事件が増え、10月27日時点では76人が犠牲となっている。
 ミナス・ジェライス州イツイウタバ市の市議候補に名乗りを挙げていた小企業家のレアンドロ・シャヴィエル氏(34、キリスト教社会党・PSC)は、その一例だ。同氏は6月にフェイスブックで、当選の暁には全てを公開し、汚職撲滅を図ると約束した直後、何者かに会社で襲われ、凶弾に倒れた。
 事件から約5カ月後、警察は、市議会議長でブラジル労働党(PTB)のフランシスコ・トマス氏が殺害を命じたと結論付けたが、トマス氏は関与を否定している。
 今年の統一地方選は、新型コロナのパンデミックで、ネット上でのライブ形式といった選挙戦略が目立つ。シャヴィエル氏の投稿も選挙戦を意識したものだった。
 選挙年は、相手候補殺害や、候補や支持者を殺された後の復讐、証人抹消のための殺人などが起こりやすい。今年、政治的な理由で殺された76人中、少なくとも2人が市長候補、16人が市議候補や市議候補にと名乗りを挙げた人だ。
 政治的な殺人の被害者が76人という数字は、前回選挙の100人は下回っているが、民政復帰後の統一地方選年の平均の52人を上回る。
 1985年の選挙で市長選が行われたのは、州都も含め201市のみで、同年は10人が殺された。以下、1988年13人、1992年37人、1996年29人、2000年57人、2004年31人、2008年82人、2012年94人、2018年100人となっている。

 エスタード紙によると、1979年の恩赦法以来、政治的な理由で殺された人は1569人おり、9・5日に1人が殺された計算になる。同紙が地方選での統計を始めた2013年は、11日に1人だったから、歴史をさかのぼって検証した結果、政治的な理由による殺人事件の発生間隔が36時間短くなった。
 今年の事件には、ミナス州で9月に起きた、市議候補のカシオ・レミス氏(37、民主社会党・PSDB)が、現市長の兄弟のジョージ・マラ氏に銃殺された件も含まれる。レミス氏は、市長一家が個人農園での工事に公金を使っていると告発していた。現市長は兄弟のやった事として、市長選に出馬している。
 犠牲者には支援者も含まれ、10月25日にはピアウイ州リベイロ・ゴンサルベスで、PTB候補の支援行進に参加中の学生サムエル・ソウザ・レアル氏(19)が刺殺された。同15日にはトカンチンス州グルピで、社会党候補の選挙事務所脇にいたルーカス・アウヴェス・アラウジョ氏(21)が射殺された。
 他方、フォーリャ紙は3日、各党の候補を決める党大会最終日翌日の9月17日以降、少なくとも12州で15人が殺され、3日に1人が犠牲になっていると報道。14人は市議候補、1人は市長候補だった。同期間中の殺人未遂は19件で、一部の候補は負傷した。
 治安と市民研究センターのパブロ・ヌネス氏によると、1月以降、候補、候補予定者、現職または元の市長や市議が、少なくとも80人殺されている。政治家を襲った最新事件は、ポデモス所属市議で軍警のジャイール・バルボーザ・タヴァレス氏(通称ジコ・バカナ)がリオ市北部で銃撃されたものだ。同氏はグアダルペ地区を統括する犯罪者の民兵組織(ミリシア)幹部で、再選を目指している。車は蜂の巣となったが、幸い、本人は頭部に軽傷を負っただけで済んだ。
 殺人や殺人未遂多発州はパラー、パライバ、サンパウロの各4件などだ。パラー州では市長候補が1人死亡。市議候補3人が襲われている。(10月26日付エスタード紙、3日付フォーリャ紙より)