《ブラジル》中国製ワクチンの治験再開=第三者機関の見解を受け=議会や最高裁も経過説明要求

治験再開が承認されたコロナバック(Divulgacao/Governo do Estado de SP)

 【既報関連】国家衛生監督庁(Anvisa)が、新型コロナウイルスに対する中国製ワクチン「コロナバック」の治験再開を認めたと11日付現地紙サイトが報じた。
 コロナバックの治験中断は9日夜9時過ぎ、国内メディアが一斉に報じた。Anvisaは夜8時47分に治験の責任者でコロナバックの国内生産も行うブタンタン研究所にメールを送ったというが、同究所関係者はメディア報道に驚いた人達からの問い合わせで治験中断を知ったという。
 Anvisaは、9日に治験者の1人が死亡したとの報告書が届き、安全性確保のために治験中断を決めたと説明した。
 だが、ブタンタン研究所は、ワクチンまたは偽薬接種から25日後の10月29日に治験者が死亡したが、治験とは無関係との報告書を6日に送付しており、より明確な説明を求められる事もなく治験が中断された。
 専門家によると、治験で重篤な事態(副作用)が起こるのは珍しい事ではなく、接種との関係を確認するために説明を求めてから中断するのが手順だという。また、説明を求められた場合にブタンタン研究所が返答する期限は14日だった。
 今回問題になっている重篤な事態は男性治験者の死だが、市警は自殺と断定しており、多くの人は治験とは関係がないと考えている。だが、Anvisaは通常の手順を踏まず、返答期限前に治験中断を決めた。

 Anvisaは10日午後、当事者からの説明だけでは接種と重篤な事態との関係を否定しきれないから、外部の専門委員会の審査が必要と説明した。
 だが、外部委員会の一つの国家研究倫理委員会(Conep)は、6日に受け取った報告書は情報が不十分だったとしつつ、同日内に内容を検討。当面は治験中断は不要と判断したという。
 また、もう一つの外部の委員会である国際独立委員会は10日午後5時前、AnvisaとConepに、治験者の死と接種とは関係がないとの意見書を送付した。
 Anvisaは10日午後、安全性に関する国際委員会からの意見書が送付されるまでは治験中断の判断を維持するとの意向を表明したが、10日に死因は自殺との調書を含む新たな書類を受け取ったとして、11日に治験継続承認を決めた。
 自殺がコロナ感染症によるうつ病が原因であった可能性は残るが、ConepとAnvisaの判断に大きな差がある事や踏むべき手順を踏まずに治験中断を決めた事、ブタンタン研究所にメールを送った直後のゴールデンアワーに治験中断が報じられた事、ボルソナロ大統領が治験中断を喜んで「また勝った」とのメッセージを流した事などは、多くの人に政治的な圧力があったのではとの疑問を抱かせた。
 大統領発言には与党からも批判が起きたが、最高裁は10日、48時間以内の経緯説明をAnvisaに命じた。また、コロナ対策に関する上下両院合同委員会は11日朝、13日の会議にAnvisaとブタンタン研究所の代表を呼び、説明を求める事を決めた。