《ブラジル》大統領が失言・暴言連発「人種差別は外国からの陰謀」=G20では環境問題で喧嘩腰

G20でのボルソナロ大統領(Marco Correa/PR)

 20日から22日にかけて、人種差別問題、環境問題、アマパーの大停電などの国内外の問題に関してボルソナロ大統領の行った言動が次々と問題となり、物議を醸した。21〜23日付現地紙、サイトが報じている。
 ボルソナロ大統領は21日、ビデオ・カンファレンスの形で行われたG20首脳会議の席で、人種問題について語った。19日に最南部リオ・グランデ・ド・スル州ポルト・アレグレで「ブラジル版ジョージ・フロイド」と呼ばれる事件が起こった。黒人男性ベト・フレイタス氏がスーパーマーケット「カルフール」で白人警備員2人に撲殺された事件だ。それを契機として、全国的に黒人差別反対のデモが起こっている。
 ボルソナロ大統領はこの問題に関し、「人種差別問題は輸入されたもの」と発言。その起源が、米国で今年の5月に黒人男性ジョージ・フロイド氏が白人警察官に殺された事件を機に起こった「ブラック・ライブス・マター(BLM)」の影響を受けたものだとして、「それが我が国の歴史に余計な効果を与えている」と発言した。
 ボルソナロ氏によると「ブラジルは多様な人種が集まった、豊かな文化の国だ。だが、それを人種闘争をもって壊そうとしている勢力がある」と語った。同氏は前日20日にも、ネット上で「背後に運動を煽っているものが存在する」と発言していた。
 この発言は、ベト・フレイタス氏の事件以降、国連のブラジル事務所をはじめとした、多くの人権団体や社会運動関係者、国内外の政治家が示した警鐘や懸念とは全く異なった見解として問題視された。
 ボルソナロ氏は「ブラジルに人種差別はない」との立場をとっている。だが、同氏自身、下議時代に黒人や先住民、女性への差別発言で問題となり、裁判沙汰にもなったことがある。

 21日の午後、ボルソナロ大統領は大停電の被害に苦しむアマパー州マカパーに出向いた。大統領視察は同州選出のダヴィ・アルコルンブレ上院議長の要請によるもので、3日の停電開始から18日も経って実現した。この反応の遅さやいまだに解決できない連邦政府の対応に対しては、国内外からの批判がでている。
 また、黒人農民や黒人奴隷の子孫たちが住むキロンボの住民団体(CONAQ )や先祖代々の土地の権利を求める運動を行っている団体は、米州機構の国際人権委員会に人権侵害として告発する手続きを行った。
 ボルソナロ大統領はここでも、「停電で被害を受けた人々はその分、電気代が安くなるだろう」と、早急な復旧を求める市民らが求めるものとはかけ離れた、的外れな発言を行った。

停電中のアマパー州で車の外側のステップに立ってアピールする大統領のことを報じたカトラッカ・リブレ・サイト

 さらに大統領はこの日、乗用車の外側のステップに乗ったままの状態でマカパー市内を行進した。大統領の背後には警備員が張り付き、大統領を守っていたが、この行為は完全に道路交通法違反だ。また、カトラッカ・リブレ・サイト22日付によれば、大統領の耳に次々と入ってきたのは市民からの歓声ではなく、《“Fora Bolsonaro!”(ボルソナロ出てけ), “Miliciano”(民兵犯罪組織), “Filho da put*” e “Vai tomar no c*”(卑語)》などの怒りの罵声だったと報道されている。
 翌22日、ボルソナロ大統領はG20のビデオ・カンファレンスに戻り、環境問題について語った。この席で大統領は、17日のBRICS会議の際に予告した、「違法伐採の木材を購入した国のリストを公表する」との言葉を実行するようなことこそしなかったものの、「さして競争力もなく、安定感もない国々から、環境問題に関していわれのない批判を受けている」とし、引き続き、ブラジルの森林伐採増加を批判する国々を強く牽制する態度を示した。