《ブラジル》「中国のスパイからネット守る」5G競争を巡る大統領三男発言で波紋=大使館から猛抗議受ける

エドゥアルド下議(Marcelo Camargo/Agencia Brasil)

 ボルソナロ大統領三男エドゥアルド下議(社会自由党・PSL)は23日、第5世代(5G)のインターネットサービスに関し、「ネットに中国のスパイが侵入してくるのを避けることがブラジルの意向」とツイッター上で発言し、中国政府を激怒させた。中国の大手ファーウェイ社の参入が予定される5G入札は2021年の下半期のことだ。25日付現地紙が報じている。
 事の発端は、エドゥアルド下議が23日にツイッター上で行った投稿だ。「ボルソナロ政権は5Gに関して、米国のクリーン・ネットワークと同盟を組む意向だ」と宣言した。クリーン・ネットワークとは、トランプ政権が推し進めている5Gに関する世界的戦略同盟のことだ。
 トランプ政権は中国との5G競争に勝とうと躍起で、10月にもオブライエン大統領補佐官らが貿易協定締結のためにブラジルを訪れた際、ボルソナロ大統領に対して米国企業と契約を行うよう強く勧めていた。
 親トランプ派のボルソナロ大統領やエルネスト・アラウージョ外相はこの話に乗り気だが、連邦政府全体としては依然、慎重なままでいる。ブラジルのインターネットサービスは、ファーウェイがすでにかなり大きなシェアを占めている。
 国家電気通信庁(Anatel)によると、同社は国内のインターネットサービスの35~40%を占めており、19日にもアミウトン・モウロン副大統領がファーウェイのブラジル支社の代表らと会議を行ったばかりだ。

 投稿後しばらくして、エドゥアルド氏はこれを削除した。だが、この投稿の件は中国政府に知られることとなり、在ブラジル中国大使館は24日、エドゥアルド氏の発言を遺憾として、抗議の声明を発表した。中国大使館は声明文で、「国の治安を偏見に満ちた考えで行おうとしている」とし、「このような発言はブラジルと中国の二国間の関係を崩しかねない」と警鐘を鳴らした。さらにトランプ政権の戦略に関しても、「中国がネットにスパイを張り巡らすなどの嘘を撒き散らすことで、ファーウェイの参入を多くの国で妨害しようとしている」と責めた。
 今回の件は、中国政府だけでなく、連邦政府にも強い波紋を投げかけている。ファビオ・ファリア通信相は24日に今回の件で取材を求められると、不快な表情で「エドゥアルドに聞いてくれ」と返答し、同氏の発言が個人的であることを強調した。エドゥアルド氏の発言は政府見解ではないものの、大統領の息子によるものだけに、閣僚発言以上の重さを持って受け止められる可能性があり、連邦政府内でも深刻な問題として受け止められている。
 5Gに関する入札は21年下半期と、まだ先の話であり、米国政権がトランプ氏からバイデン氏に代わるため、クリーン・ネットワークの件もまだ不透明だ。
 エドゥアルド氏が中国大使館を怒らせたのはこれがはじめてではない。3月には新型コロナウイルスに関して、中国陰謀論をツイートし、抗議を受けている。