《ブラジル》緊急支援金減額で貧困者や極貧者増加=来年打ち切りでさらに悪化へ=最悪なら失業者は倍の3千万人に?

緊急支援金を引き出そうとする人々(2日付エスタード紙の記事の一部)

 新型コロナの感染拡大による失業者の増加や貧困者の生活困窮を避けるため、連邦政府が採った緊急支援金支給や雇用維持政策は年内で終わる。緊急支援金の額が半減され始めた9月は貧困者と極貧者が急増し、打ち切りとなる来年以降はさらに悪化する見込みと2日付現地紙が報じた。
 ジェツリオ・ヴァルガス財団(FGV)ブラジル経済研究所(Ibre)のダニエル・ドゥッケ氏がコロナ禍の影響を調べる地理統計院(IBGE)の調査結果を分析した結果、貧困者数は8月の3876万6千人が4739万5千人にと862万9千人も増え、人口比も18・3%が22・4%になった。
 極貧者は517万1千人から925万1千人に408万人増え、人口比も2・4%が4・4%に上昇した。緊急支援金支給が終わる来年1月以降は状況がさらに悪化する見込みだ。
 貧困者は1人あたりの家庭収入が1日5・5ドルの人、極貧者は1日1・9ドルの人を指す。
 コロナ禍に関する統計では、緊急支援金を省いた場合、最も貧しい方から10%の人達の1人あたりの家庭収入は月31・69レアルで、2100万人が1日1・05レアルで過ごした事になる。緊急支援金を加えた場合は、月219・96レアルで、1日7・33レアルとなる。
 ドゥッケ氏は、雇用は徐々に回復しているが、貧困者や極貧者の労働市場復帰(参入)は他の階層の人より困難で、恩恵は僅かだという。
 他方、リオ州立大学社会政治研究所(Uerj/Iesp)のロジェリオ・バルボーザ氏によると、コロナ禍により失業した人や所得が減少した人が出た事で、5月の平均所得は緊急支援金込みで1206レアル、支援金抜きだと1094レアルに落ち込んだ。9月は1321レアルと1187レアルになったが、19年の1458レアルには及んでいない。

 同氏の研究での貧困者は収入が最低賃金の3分の1(348レアル)未満の人で、総人口に占める割合は、5月が15・2%、9月が11%だった。緊急支援金を省いた場合は、5月が28%、9月が24%だった。昨年は18・7%だった。
 最も貧しい方から40%の人達は緊急支援金で一時的に、2014年以来となる所得増を経験した。貧富の格差を若干だが改善したことになる。ただし、経済活動が回復しておらず、失業者も増えている中での緊急支援金打ち切りは、社会格差を1980年代のレベルまで広げるという。
 コロナ禍の統計によると、9月の場合、パンデミック故または地元に就職口がなくて求職していない人は1530万人いた。バルボーザ氏は、これらの人が全員求職し始めれば、失業者は現在の倍の3千万人に達する可能性があるという。その場合は人口の4分の1が貧困者となり、1990年代の状態に戻る上、非正規雇用者は就労人口の半数を超えるという。
 経済省によると、1日までに支払われた緊急支援金は2758億レアルで、6800万人が恩恵を受けた。今年の支出額は3220億レアルに達する見込みだ。