アマゾン森林破壊でサンパウロ水不足に=大気中の水の循環が減少=南部地域の気候に影響?

アマゾンでの森林伐採がカンタレイラ水系の貯水率低下を招いていると報じる4日付UOLサイトの記事の一部

 サンパウロ大都市圏最大の水がめ、カンタレイラ水系の12月29日現在の貯水率は、同日としては2014年の水危機直前の2013年12月以来となる35・6%に低下している。同水系では昨年10月以降、国家水資源庁(ANA)が定めた警告規準の40%以下の状態が続いている。
 2020年の場合、同水系への降水量が平年を超えたのは12カ月中3カ月のみ。12月は平年値にかなり近かったが、乾期が始まった4月は、平年の降水量が86・6ミリなのに2・2ミリしか降らなかった。
 直ちに水不足が起きる可能性を地政学者は否定するが、節水の必要は強調する。サンパウロ総合大学のペドロ・コルテス教授によると、カンタレイラ水系への降水量や貯水率の低下の根本的な原因は法定アマゾンでの森林伐採増加だ。アマゾンでの森林伐採増加は、他水系の貯水池やダムの水位低下も招いている。
 国立宇宙研究所(Inpe)が2014年に作成した「アマゾンの将来の気候」という報告書によると、同地域での森林伐採はブラジル内陸部の気圧に変化を生じさせ、大西洋から流れ込む湿気を帯びた風の減少を招く。森林伐採が進めば、内陸部の雨が減るのだ。
 アマゾンの森林は大西洋からの湿気を呼び込む「水のポンプ」で、大きな木は1日に1千リットル以上の水蒸気を発す。アマゾン全域では毎日、20兆リットル(200億トン)の水を循環させている。
 コルテス氏は「深く根を張っている木を根が浅い草と入れ替えたら、アマゾンの奥地まで届く量の水を吸い上げる事は不可能」との表現で、南方に向かう風が運ぶ水蒸気の量が森林伐採によって減少し、乾燥度が高まる事を説明している。

昨年のパンタナル火災の様子(Chico Ribeiro)

 1989年発行の『ネイチャー』誌に掲載された、アマゾンの原生林を牧草地と入れ替えた場合のシミュレーションは、水蒸気の発生量が減り、水の循環が弱まる事や、地表の温度が高まる事を明らかにしている。
 国立アマゾン地方調査院(Inpa)は2006年に、ブラジルの主要都市は既に水の供給が限界に達しており、アマゾン上空の水蒸気がこれ以上減少すれば、社会的に深刻な影響が生じるとの説を発表した。
 アマゾンでの森林伐採の影響は、寒冷前線が運んでくる大西洋からの湿気が丘陵地で遮られるサンパウロやミナス・ジェライス、マット・グロッソなどの州ほど大きい。南部は寒冷前線による雨が多く、森林伐採の影響は感じにくい。
 コルテス氏によると、昨年のパンタナルでの干ばつや火災多発は、アマゾンから流れ込む水蒸気を含む雲の減少が原因だという。
 2019年8月~20年7月のアマゾンの森林伐採は1万1100平方キロで、2008年以来の高い数値だ。アマゾンでの森林伐採は2004年以降、減少傾向にあったが、19年以降は1万平方キロを超えている。伐採は増加の一途で、20年11月の484平方キロは19年11月を23%上回り、11月としては10年間で最大だ。
 「アマゾン開発は1970年代のトランスアマゾニア高速道建設以降、50年間続いている。学者達は1980年代の終わりに、森林開発が降水量減少などを招くと警告した。我々は今、その結果を刈り取っている」とコルテス氏は続けた。
 カンタレイラ水系で14年のような水危機が起きるかは今年秋の降水量次第だ。最近は雨が多いが、それでもまだ、同水系の貯水率は望ましいとは言えない状態が続いている。(4日付UOLサイトより)