《ブラジル》マナウス市=重症者急増で医療崩壊が深刻化=酸素不足で大量窒息死の危機=空軍機がボンベ輸送も焼け石に水

空軍機に詰め込まれる酸素ボンベ(Divulgacao/Centro de Comunicacao Social da Aeronautica)

 【既報関連】英国型や南アフリカ型の変異種と同じ遺伝子情報を持つ変異種の存在が確認されたアマゾナス州マナウス市では、医療体制がますますひっ迫。酸素ボンベ不足で患者をピアウイ州に移送する事態まで起きていると14日付現地サイトが報じた。
 マナウス市の病院で新型コロナ感染症の患者の入院数が急増している事は繰り返し報道されているが、重症患者の増加に伴い、人工呼吸器用の酸素ボンベの需要も急増。裁判所が企業に供給強化を命じ、空軍機によるボンベ輸送も行われている。それでも酸素ボンベが尽きて、患者を他州に移送しなくてはならない病院も出ている。
 アマゾナス州オズワルド・クルス財団(Fiocruz)研究員のジェゼム・オレラナ氏によると、現場から送られてくる種々のメッセージや電話で知る窮状は、想像を絶するものだという。
 同氏によるとマナウス市では、ジェツリオ・ヴァルガス大学病院やジョゼ・デ・ジェスス・リンス・デ・アルブケウケ救急診療所(SAP)といった医療機関で酸素ボンベが尽き、入院中の患者が全員、窒息死しかねない状態に置かれている病棟があるという。
 新型コロナと対峙する医療現場の困窮ぶりは、ジェツリオ・ヴァルガス大学病院を運営するアマゾナス連邦大学のシルヴィオ・プガ学長も認めた。同学長によると大学病院では14日朝、酸素ボンベが尽き、一部の患者をピアウイ州のテレジーナ大学病院に移送する必要が生じたという。
 人工呼吸器が使えなくなり酸素補給が不能となれば、病院にいながらにして患者が次々に窒息死する可能性があるからだ。酸素欠乏が起きれば、助かっても重篤な後遺症が残り得る。病院側は詳細を語っていないが、職員の一人は人工呼吸器の酸素が尽き、手動で人工呼吸を施していると語っている。

 プガ学長は「患者を救うために全力を尽くしている」と言うが、手動で呼吸を施せるのは医療従事者1人につき1人で、1回の作業は20分が限度。20分毎に担当者を入れ替え、人工呼吸を続けている間も他の作業を行う必要があるため、この状態を長時間保つ事は不可能だ。
 ピアウイ州テレジーナ市市立保健財団のジルベルト・アルブケルケ氏によると、テレジーナ大学病院に送られた患者は一般病棟にいた30人で、移送は空軍機が行った。受け入れ要請は14日未明にパズエロ保健相から入ったという。
 マナウス市では、入院できずに自宅待機中の患者の中にも酸素ボンベが必要な人がいる。州立病院での酸素の需要は7万立方メートル/日に達しており、三つの企業が供給できる量の限界を超えている。空軍は8日に酸素入りの大型タンク6個と酸素ボンベ350本、12日にも大型タンク6個を届けたが、現状では焼け石に水だ。
 パズエロ保健相は先日から現地入りしており、13日も、単発の措置では問題は解決せず、社会隔離などの徹底が必要と説いたが、状況は厳しくなる一途だ。
 マナウス市役所と連邦地裁は13日、国家高等教育試験(ENEM)実施を見送る事も決めた。