《サンパウロ州》高齢者への接種日程白紙に=保健省の一括買い上げで=予定では2月から70歳以上開始だが

絶対数不足で増産が望まれているコロナバック(Govesp)

 【既報関連】国家衛生監督庁(Anvisa)による緊急使用許可が出た事で、サンパウロ州政府は17日から新型コロナの予防接種キャンペーンを開始したが、ブタンタン研究所が準備したワクチン「コロナバック」を保健省が一括で買い上げた事で、昨年12月に発表した日程での予防接種実施が難しくなったと18、19日付現地紙、サイトが報じた。
 Anvisaが17日に緊急使用を認めたのは中国から輸入した完成品の600万回分で、サンパウロ州政府は18日に、ブタンタン研究所で瓶詰したワクチン480万回分の緊急使用許可も申請した。
 だが、保健省との合意により、サンパウロ州も国の予防接種キャンペーンに従う必要が生じた事と、中国からの原材料やインド製のオックスフォード・ワクチンの到着が遅れている事などで、サンパウロ州政府は予定通りに予防接種キャンペーンを実施する事ができなくなった。
 サンパウロ州政府は当初、先住民やキロンボ住民、医療従事者への接種後、75歳以上は2月8日と3月1日から、70~74歳は2月15日と3月10日からといった具合に、接種日程を組んでいた。
 だが、中国からの原材料の到着が遅れ、ワクチン増産日程に狂いが生じかねない事態が起きている事や、ブタンタン研究所が生産、所持しているワクチンを保健省が全て購入する事を決め、国の予防接種計画に従う事も求めたため、サンパウロ州での高齢者向けの予防接種計画は白紙状態になった。キロンボ住民も国の計画外として一旦外されたが、19日に対象に戻った。

 保健省は最高裁が命じた予防接種計画の修正版を未提出だが、12月に出した計画での第1弾対象者は医療従事者と75歳以上の高齢者、高齢者収容施設にいる60歳以上の高齢者などだ。
現在使えるワクチンは600万回分だけであるため、当面は、コロナ感染の危険度が特に高い現場の医療従事者(全体の3分の1)と先住民、施設にいる高齢者(全体の約0・5%)らに限定される。
 専門家はコロナバックだけに頼る現状に不安を抱いており、コロナバックとオックスフォード・ワクチンの双方が中国からの原材料不足で生産不能に陥る可能性も指摘された。とはいえ、サンパウロ州政府は19日、中国からの原材料5400リットル(ワクチン550万回分)が来週到着と発表した。
 ブタンタン研究所は保健省に1月中に870万回分を送る事を約束しており、4月までに4600万回分のワクチン納品の合意も成立している。国内生産の許可申請は、シノバック社からのデータ送付後に行われる。
 なお、サンパウロ州のドリア知事は18日、中国がオックスフォード・ワクチンやコロナバックの原材料輸出を渋っている原因の一つは、ボルソナロ大統領や息子、政権関係者が中国を批判している事だと指摘。調整に乗り出したロドリゴ・マイア下院議長は19日、20日に中国大使と会談する予約をすぐさまとった。
 連邦政府はパズエロ保健相やアラウージョ外相を通して中国との対話を試みてきたが、むしろ外相の反中姿勢は障壁の一つとされており、対話に向けた人材探しも始まっている。