《ブラジル》ハイチ移民が集団脱出へ=コロナ禍恐れペルー国境で座り込み

国境でキャンプを張るハイチ移民(Samuel Bryan)

 コロナ禍のブラジルから脱出しようと、アクレ州から違法出国を試みて止められたハイチ移民が抵抗を行って治安が悪化し、ペルーと国境を接するアシス・ブラジル市が緊急事態宣言(カラミダーデ)を出した。18、19日付現地紙、サイトなどが報じている。
 事の発端は14日、メキシコや米国に行こうと考えた400人ほどのハイチ移民がアシス・ブラジルからペルーへの違法出国を試みたことだった。バイデン政権が不法滞在移民の合法化を検討していることもあり、今のうちに移動しようとの思惑も影響しているようだ。
 ペルーとの国境は昨年3月以降、パンデミックのせいで閉鎖されており、この日も国境を越えようとした移民たちをペルー側の軍隊が止めた。
 アシス・ブラジル市はかねてから、移民たちが出国を試みる場所として知られており、ハイチ移民たちは昨年7月以降、何度も出国を試みていたという。
 その背景には、同市における移民に対するコロナ対策の甘さがあった。コロナ対策のための移民専用施設はキューバ移民に対してひとつ作られたのみで、ハイチ移民の不満が高まっていたという。

 ハイチ移民の多くは、2010年に起こったハイチ大震災を契機に、難民としてブラジルにわたり住んでいた。だがこのコロナ禍で職を失って生活に困り、ペルー脱出を試みていた。彼らは、ペルーを経由して米国やメキシコに渡ることを願っている。
 アシス・ブラジル市によると、ペルー軍に入国を阻止されたハイチ移民たちが同市内の収容施設に戻ってきたため、市内の学校などを開放して移民たちをうけいれた。
 だが、約100人ほどのハイチ人がその後も国境の橋のたもとにキャンプを張り、国境を開けるよう圧力をかけ続けているという。
 そこで同市のジェリー・コレイア市長はカラミダーデを宣言。さらには連邦政府にも援助を依頼し、国境付近の警備強化にも乗り出している。
 法務省はアシス・ブラジル市の国境警備を強化するため、治安部隊の派遣を決め、18日付官報に掲載した。派遣期間は60日間で4月18日までだが、延長もあり得る。